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相続空き家の3000万円特別控除|実家で使える条件を順に確認

実家を相続してから空き家のまま置いていると、いずれ売ることになったときに「相続空き家の3000万円特別控除」という制度が使えるかどうかで、手元に残るお金が大きく変わります。亡くなった親が一人で住んでいた家を、相続人が期限内に売る、あるいは耐震基準を満たすか取り壊すという条件をそろえる、それだけで譲渡所得から最高3000万円が控除される仕組みです。ただし要件は一つではありません。被相続人の居住のしかた、家屋の建築時期、耐震改修や取壊しのタイミング、譲渡代金の上限、相続人の人数。どれか一つが外れただけで、控除は受けられなくなります。このページでは、国税庁が公表している要件を、実家の売却を考え始めた人が確認する順番に並べ直します。磐田市・袋井市・森町のあたりでも、昭和の時期に建てられた家は少なくありません。

相続した実家の登記事項証明書と税金の資料を確認する場面のイメージ

まず結論

まず相続開始日と、3年目の12月31日という期限を確認します。次に、被相続人が一人で住んでいたか、家が昭和56年5月31日以前の建築かを登記と住民票で確かめます。耐震基準を満たすか、取り壊すか、期限内に改修・取壊しを終えるかを選び、売却代金が1億円以下か、相続人の数による控除額の違いも確認します。最後に被相続人居住用家屋等確認書などを市区町村に申請し、確定申告に備えます。

相続空き家の3000万円特別控除の仕組みを示すピクトグラム
制度の概要空き家を売ったときに譲渡所得から最高3000万円を控除できる制度であることを示す。
3年の売却期限を示すピクトグラム
期限のリスク相続開始から3年目の12月31日を過ぎると特例が使えなくなることを示す。
居住要件・家屋の要件を順に確認する様子を示すピクトグラム
要件を順に確認居住要件・家屋の要件・耐震の要件を一つずつ確認する行動を示す。
確認書の申請と確定申告という手続きの分かれ道を示すピクトグラム
書類をそろえて申告確認書の取得と確定申告という、次に取るべき手続きの分岐を示す。

制度の趣旨と、「3年以内」が持つ意味

この特例は、老朽化した空き家を早く手放してもらうためにつくられた制度です。使えるかどうかは、まず期限と大枠の条件を知ることから始まります。

相続空き家の3000万円特別控除は、正式には「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」という名称の制度です。亡くなった方が一人で住んでいた家を、相続人が一定の条件のもとで売却したとき、譲渡所得の計算上、最高3000万円を控除できます。老朽化した空き家が管理されないまま放置される問題に対応するため、早めに売却や取壊しを選んでもらう狙いでつくられた制度で、対象になるかどうかは家屋ごと、相続人ごとに判定されます。

対象になる売却の期間は決まっています。平成28年4月1日から令和9年12月31日までに売ることが前提です。つまりこの特例そのものに終わりの年があります。今後、期間が延長されるかどうかは制度改正次第ですので、実際に売却を検討する段階で、国税庁の案内か税理士に最新の期間を確かめてください。

もう一つの期限が、相続人ごとにかかってきます。「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること」という条件です。言い換えると、被相続人が亡くなった日から数えて3年目の応当日が来る年の年末が、売却の締め切りになります。例えば相続の開始が令和8年(2026年)中であれば、3年を経過する日は令和11年(2029年)中に来るため、期限はその年の12月31日です。遺産分割協議が長引き、名義変更が遅れるほど、この期限に近づいていきます。

この期限は、契約の締結日を基準にするか引渡しの日を基準にするかで扱いが変わることがある「売った日」で判定されます。年末近くに売却が進んでいる場合は、期限をまたぐかどうかで特例が使えるかが変わるため、契約書の日付をどちらで扱うかを、仲介する宅地建物取引業者や税理士に早めに確認しておく必要があります。

控除の仕組み自体は、通常の譲渡所得の計算に一手間を加えたものです。譲渡所得は収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算されますが、この特例が使えると、そこからさらに最高3000万円を差し引けます。取得費は、亡くなった方が家を買ったときの金額や、その後の増改築の費用の合計から減価償却費を引いたもので、古い家では売買契約書や領収書が残っておらず、取得費が分からないことも珍しくありません。取得費が不明なときは、譲渡価額の5%を概算取得費として使う扱いがありますが、実際の取得費が分かる資料が見つかれば、そちらを使ったほうが有利になることが多いので、古い書類を先に探しておく価値があります。

似た名前の制度に、自分が住んでいる家を売ったときに使える3000万円特別控除があります。これは相続空き家の特例とは別の制度で、居住要件も申請書類も異なります。実家を相続した人が自分でその家に住んでから売る場合と、空き家のまま売る場合とでは、当てはまる特例が変わってくることがあります。どちらに該当するかは個別の事情によるため、この記事では相続空き家の特例に絞って説明し、判断そのものは税理士に確認することをすすめます。

この特例は、次の四つの要件をすべて満たしたときに使えます。被相続人の居住要件と家屋の要件(第2章)、耐震改修または取壊しの要件(第3章)、譲渡価額と相続人数の要件(第4章)、そして確定申告で提出する書類と自治体の確認書(第5章)。どれか一つでも外れると、控除そのものが受けられません。次の章から、この順番で一つずつ確かめていきます。

最初の一歩として、家族の記録に「相続開始日」と「3年目の12月31日」の二つの日付を書き込んでおくことをすすめます。遺産分割の話し合いが動き出す前に期限が分かっていれば、売却するかどうかの判断そのものを急がずに進められます。逆に期限を知らないまま話し合いだけが長引くと、要件を満たしていても使えないまま終わることがあります。

要件に当てはまるかどうか、この時点で確信が持てなくても先へ進んで構いません。次章以降で一つずつ確かめていけば、どこが分かっていてどこが不明なのかがはっきりします。分からない点が残ったまま契約を進めるより、契約前の段階で税務署の相談窓口や税理士に、分かっている事実(相続開始日、建築時期、居住状況など)を伝えて見通しを聞いておくほうが、後戻りが少なくて済みます。

  • 対象になる売却期間(平成28年4月1日〜令和9年12月31日)に入っているかを確かめる
  • 相続開始日から3年目の12月31日という個別の期限を家族の記録に書いておく
  • 売った日を契約日と引渡し日のどちらで扱うか、仲介業者・税理士に確認する
  • 取得費が分かる古い売買契約書や領収書を先に探しておく
  • 自分が住んでいる家の3000万円特別控除と混同していないかを確認する

図1特例が使えるかを、この順番で確かめる

特例が使えるかを、この順番で確かめる四つの要件は、どれか一つが外れても控除を受けられません。左から右へ確認を進め、最後に3年の期限内に売却と申告を終える形です。この一枚が、以降の章の道しるべになります。相続開始相続が始まる登記や遺産分割を進めながら、家屋が特例の対象になるかをこの後の要件で確認していく。居住要件被相続人の居住要件を確認する相続開始の直前に被相続人が一人で住んでいたか、老人ホーム入所など特定の事情に当たるかを見る(第2章)。耐震要件耐震改修または取壊しの要件を満たす売却時に耐震基準を満たすか、取り壊すか、翌年2月15日までに改修・取壊しを終える(第3章)。価額要件譲渡価額と相続人数を確認する売却代金の合計が1億円以下か、相続人が3人以上のときは控除上限が2000万円になる点を確認する(第4章)。3年の期限相続開始から3年目の12月31日までに売るこの期限を過ぎると、他の要件を満たしていても特例そのものが使えなくなる。申告確定申告で確認書類をそろえて提出する被相続人居住用家屋等確認書などを添えて、譲渡した年の翌年に申告する(第5章)。どの要件も、書類で裏付けられて初めて認められる。次章以降で、どの要件をどの書類で確かめるかを一つずつ見ていく。
四つの要件は、どれか一つが外れても控除を受けられません。左から右へ確認を進め、最後に3年の期限内に売却と申告を終える形です。この一枚が、以降の章の道しるべになります。

被相続人の居住要件と、家屋そのものの要件

特例の入り口は、二つの「だったこと」です。亡くなった方がその家に一人で住んでいたこと、そしてその家が一定より古い、区分所有ではない一戸建てであったこと。この章ではこの二つを具体的に確かめます。

居住要件は、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋であることと、相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた者がいなかったことの二つで構成されます。つまり、亡くなる直前まで、その家にはその人しか住んでいなかった、という状態が前提です。配偶者や子と同居していた家は、この時点で対象から外れます。二世帯住宅で親世帯だけが暮らしていた区画のように、実態として一人で住んでいたと言えるかどうかは、家の構造や生活の実態によって判断が分かれるため、個別に確認が必要です。

確かめる資料は、住民票の除票と戸籍の附票です。除票には、亡くなった方が最後にどこに住民登録していたかが記録されています。附票を取ると、住所の移り変わりも追えます。実家の住所と除票の住所が一致しているか、まず照らし合わせてください。同居していた家族がいた形跡があれば、それも記録として残しておくと、後で確認書を申請するときに説明がしやすくなります。

老人ホームなどに入所していたために、亡くなる直前は実際には家に住んでいなかった、という場合も少なくありません。この場合でも、要介護認定を受けていたことなど一定の事由に該当し、いくつかの条件を満たせば、その家を「従前居住用家屋」として特例の対象にできる仕組みがあります。この場合、入所後もその家に他の人が入居したり、事業のために使われたりしていないことなど、いくつかの要件が加わります。要件の当てはめは施設の種類や入所の経緯によって変わるため、個別の状況を税理士か国税庁の窓口へ確認してください。

家屋の要件は、建築時期がまず問われます。昭和56年5月31日以前に建築されたことが条件で、これは建築基準法の耐震基準が改正される前に建てられた家、という線引きです。新築年月日は、登記事項証明書の表題部に記載されています。法務局(登記所)で取得でき、オンラインの登記情報提供サービスでも確認できます。実家の建築時期をまだ確認していないなら、他の要件を調べるより先に、まずこの一枚を取り寄せることをすすめます。

磐田市・袋井市・森町のあたりでも、昭和40年代から50年代に建てられた木造住宅は珍しくありません。当時の耐震基準で建てられた家は、現行基準に比べて壁の量や接合部の強度が異なり、大きな地震での被害が心配される構造です。この特例が昭和56年5月31日以前という線引きをしているのは、そうした古い基準の家を対象に、耐震改修か取壊しを条件として組み合わせているためです。建築時期がこの要件に当てはまるほど古い家であるということ自体が、次の章で扱う耐震の話につながっていきます。

区分所有建物、つまりマンションの一室のような建物は対象外です。登記事項証明書の家屋の種類や敷地権の記載を見れば、区分所有かどうかが分かります。実家が戸建てだとばかり思っていても、二世帯住宅を区分所有の形で登記していたようなケースもあるため、思い込みで進めず、証明書で確認しておくと安全です。

主として被相続人の居住用に供されていた一の建築物、という条件もあります。敷地の中に母屋と離れ、あるいは倉庫を兼ねた建物が複数あるとき、対象になるのは主に住まいとして使われていた一棟だけです。離れを物置として使っていた、あるいは空き家になってから相続人が荷物置き場にしていた、といった事情がある場合、どこまでを一体として扱えるかは実際の使われ方によります。複数の建物がある実家では、この点を早めに整理しておくと、後の耐震改修や取壊しの範囲を決めやすくなります。

ここまでの二つの要件は、いずれも相続の開始の直前という一時点の状態を見るものです。相続後に相続人が家に住んだり、貸したりしたことは、この要件そのものには影響しません。ただし、それは次の章以降で扱う別の要件(耐震・取壊しの期限や、譲渡までの使用状況)に関わってきます。ここでは、亡くなる直前の状態を、書類でさかのぼって確認することに集中してください。

  • 住民票の除票・戸籍の附票で、亡くなる直前の居住状況を確認する
  • 登記事項証明書の表題部で建築時期(昭和56年5月31日以前か)を確認する
  • 登記事項証明書で区分所有建物でないことを確認する
  • 敷地内に複数の建物がある場合、どれが主な居住用建物かを整理する
  • 老人ホーム入所などの事情があれば、税理士か国税庁の窓口へ個別に確認する
居住要件・家屋の要件と、確かめる書類
確認する項目見る書類・情報取得先
亡くなる直前の居住状況住民票の除票、戸籍の附票本籍地・最後の住所地の市区町村窓口
建築時期(昭和56年5月31日以前か)登記事項証明書の表題部法務局(登記所)、登記情報提供サービス
区分所有建物でないか登記事項証明書の家屋の種類・敷地権の記載法務局(登記所)
老人ホーム入所の経緯入所契約書、要介護認定の資料施設、市区町村の介護保険担当窓口

耐震改修または取壊しの要件を満たす

家屋の要件を満たすだけでは足りません。売却の時点で耐震基準を満たすか、取り壊すか、あるいは決められた期限までに改修・取壊しを終えるか。三つのパターンのどれかを選ぶ必要があります。

耐震・取壊しの要件には、大きく分けて三つのパターンがあります。一つ目は、売却の時点ですでに現行の耐震基準を満たしていること。二つ目は、売却の前に家屋を全部取り壊し、土地だけを売ること。三つ目は、令和6年以後の譲渡に限り、売却した日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを終えること。どれを選ぶかによって、必要な書類も進め方も変わります。

一つ目のパターンでは、家屋を残したまま売却するため、買主にとっても住める状態の家として引き渡せます。ただし、現行の耐震基準を満たしていることを、耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書という書類で証明する必要があります。証明書は、耐震診断を行った建築士や登録された検査機関が発行します。昭和56年5月31日以前に建てられた家がそのままで基準を満たしていることはまれで、多くの場合は耐震改修工事を行ったうえで証明を受ける形になります。

耐震改修には、壁の補強や基礎の補修など、家の構造に手を入れる工事が必要になり、古い家ほど費用がかさみやすくなります。工事の内容や費用は建物の状態によって大きく変わるため、この記事では金額を示しません。耐震診断を依頼する段階で、改修にどこまでの費用がかかりそうかの見積もりを取り、それを踏まえて改修するか取壊しに切り替えるかを判断することになります。

二つ目のパターンは、家屋を売却前に取り壊し、更地として土地だけを売る方法です。全部の取壊しが条件になるため、母屋だけ壊して離れを残す、といった部分的な取壊しでは要件を満たしません。取壊しの費用は譲渡費用として扱われ、譲渡所得の計算上、収入金額から差し引ける費用の一つになります。取壊しの時期や順番によっては、解体業者の手配に時間がかかることもあるため、3年の期限から逆算して、いつまでに取り壊すかを早めに決めておく必要があります。

三つ目のパターンは、令和6年以後の譲渡に限って加わった選び方です。売却した年の翌年2月15日までに、買主が耐震改修または取壊しを終えれば、売主である相続人が改修工事を行わなくても特例の対象になります。これは、相続人が古い家をそのままの状態で早く手放したい場合や、買主が取壊しを前提にリノベーションや建替えを計画している場合に選びやすい形です。ただし期限は売却した年の翌年2月15日という決まった日であり、買主の工事のスケジュール次第では間に合わない可能性もあるため、契約の段階で工事の完了時期を条件として書面に残しておくことが実務上大切になります。

三つのパターンのどれを選ぶかは、家の状態、買い手が付きやすい形、費用のかけ方によって変わります。住める状態を保って売りたいなら耐震改修、更地にして土地として売りたいなら取壊し、買主側で改修や解体を進めてもらいたいなら三つ目のパターンという整理になりますが、実際には仲介する不動産会社との相談のなかで、地域の需要(土地として欲しい人が多いか、古家付きでも買い手が付くか)を踏まえて決めることになります。

遠州地域では、冬の空っ風と台風の通り道であることから、老朽化した木造家屋を長く放置すること自体のリスクも考えあわせる必要があります。売却の方針が固まらないまま数年が過ぎると、屋根や外壁の傷みが進み、耐震改修そのものが難しくなったり、取壊し費用が膨らんだりすることもあります。3年という期限は、こうした劣化のリスクとも重なっている点を意識しておくとよいでしょう。

耐震基準適合証明書は、売却前、つまり引渡しより前に取得しておく必要がある点にも注意してください。売買契約を結んだ後に慌てて耐震診断を依頼すると、証明書の発行が引渡しに間に合わないことがあります。改修工事を伴う場合はなおさら、逆算したスケジュールが必要です。取壊しを選ぶ場合も同様に、引渡しの時期から逆算して、解体業者への発注時期を決めてください。

どのパターンを選ぶにせよ、決めた内容と根拠(証明書の発行日、取壊しの完了日、工事完了の期限)を記録に残しておくと、次の章で説明する確定申告の書類をそろえる段になって慌てずに済みます。

不動産会社に売却を相談する段階で、この三つのパターンのどれを前提に価格を出してもらうかを伝えておくことも大切です。耐震改修を前提にした査定と、取壊しを前提にした査定では、想定する買い手の層も、提示される金額の考え方も変わってきます。方針を決めないまま査定だけを先に取ると、後でパターンを変えたときに、想定していた売却額と特例の適用範囲がずれてしまうことがあります。

  • 耐震基準を満たして売る、取り壊して売る、期限内に改修・取壊しを終える、三つの選択肢を整理する
  • 耐震基準適合証明書・建設住宅性能評価書は引渡し前に取得する必要があると知っておく
  • 取壊しを選ぶ場合は全部の取壊しが条件であることを確認する
  • 令和6年以後の譲渡で三つ目のパターンを使う場合、翌年2月15日という期限を契約書に明記する
  • 3年の期限から逆算して、耐震診断・改修・解体の発注時期を決める

図2耐震改修か取壊しかを選ぶ場面で、誰が何を担うか

耐震改修か取壊しかを選ぶ場面で、誰が何を担うか証明する相手も、期限までに手を動かす相手も、選んだパターンによって変わります。契約前に、誰がいつまでに何をするのかを一つずつ確かめてください。耐震改修か取壊しかを選ぶ場面空き家をどちらの状態で譲渡するかで、証明する書類も期限も変わる。耐震診断を行う建築士・検査機関耐震診断を行い、現行の耐震基準を満たすことを示す耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書を発行する。解体業者家屋を売却前に全部取り壊す場合に工事を担う。取壊し後は土地として譲渡する。買主(引渡し後)令和6年以後の譲渡では、買主が引渡しを受けた翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを終える形も選べる。家屋の所在地の市区町村被相続人居住用家屋等確認書を発行し、これまでの要件を満たしているかを窓口で確認する。証明する取り壊す改修・取壊す確認書を出す証明書の発行日・取壊しの完了日・工事完了の期限は、いずれも引渡しや翌年2月15日という日付から逆算して決める。
証明する相手も、期限までに手を動かす相手も、選んだパターンによって変わります。契約前に、誰がいつまでに何をするのかを一つずつ確かめてください。

譲渡価額と相続人数の要件

ここまでの要件を満たしていても、売却代金が高すぎたり、相続人の数によって控除額の上限が変わったりします。数字にかかわる要件をこの章でまとめて確認します。

譲渡対価の要件は、売却代金が1億円以下であることです。これは家屋と敷地をあわせた金額で判定されます。相続人が複数いて、土地を分筆してそれぞれ別々に売った場合や、時期をずらして分割で売った場合も、合計額で1億円以下かどうかを判定します。一人あたりの受取額ではなく、対象となる家屋・敷地全体としての合計金額が基準になる点に注意してください。

分割して売る場合の判定は複雑になりやすい部分です。例えば土地の一部を先に売り、残りを翌年に売るようなケースでは、複数年にまたがる売却の合計で1億円を超えるかどうかが判定されます。この合算のルールを見落とすと、それぞれの売却は1億円以下でも、合計で超えてしまい、特例が使えなくなることがあります。共有名義のまま複数の相続人がそれぞれ持分を売る場合も同様に、合計額での判定が必要になるため、契約を分ける前に税理士へ相談しておくことをすすめます。

相続人の数による違いも押さえておく必要があります。相続人が2人以下の場合、特別控除額は一人あたり最高3000万円です。一方、令和6年1月1日以後の譲渡で、相続人が3人以上の場合は、一人あたりの特別控除額が最高2000万円になります。同じ家を売っても、相続人の人数によって控除される合計額の上限が変わる、という仕組みです。

この違いは、遺産分割の進め方にも関わってきます。相続人の数を後から減らすことはできませんが、遺産分割の内容によって、誰が家屋・敷地を取得し、誰が売却の当事者になるかは変わります。相続人の人数と控除額の関係をあらかじめ知っておけば、遺産分割協議のなかで、税負担も含めた話し合いがしやすくなります。ここでも判断そのものは税理士に確認することが前提になりますが、少なくとも人数によって控除額が変わるという事実は、早い段階で家族に共有しておく価値があります。

適用が除外される譲渡先もあります。配偶者や直系血族など、税法上「特別の関係がある人」への譲渡は対象外です。実家を親族内で譲り渡す形にすると、この特例は使えません。近しい親族へ譲る計画がある場合は、この特例を前提にせず、別の方法(贈与や、通常の売買としての扱いなど)を検討する必要があります。

他の特例との併用にも制限があります。相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(相続税額を取得費に加算する特例)や、収用等の場合の特別控除など、他の譲渡所得の特例の適用を受けている場合は、この特例を重ねて使うことができません。複数の特例のどちらが有利かは、取得費や相続税額、譲渡価額によって変わるため、確定申告の前に、両方の特例で試算してから選ぶ必要があります。

相続開始から譲渡までの間に、その家屋や敷地を事業用・貸付用・居住用として使っていた場合も、対象から外れます。空き家のまま管理していたつもりでも、一時的に倉庫代わりに使ったり、知人に貸したりしていた期間があると、この要件に抵触するおそれがあります。相続後の使い方についても、いつ・誰が・どのように使ったかを記録に残しておくと、後で確認を求められたときに説明しやすくなります。

同一の被相続人から取得した家屋・敷地について、複数回にわたってこの特例の適用を受けることもできません。一度使った特例を、同じ被相続人の別の資産の売却で再び使うことはできない、という制限です。実家以外にも被相続人の名義の不動産があった場合は、どちらの売却でこの特例を使うのかを、あわせて検討しておく必要があります。

数字に関わる要件は、契約書にサインする前に確認しておくべきものばかりです。売却代金が1億円に近い、相続人が3人以上いる、親族への譲渡を考えている、といった事情が一つでもあれば、契約の前に税理士へ相談する時間を確保してください。契約後に要件から外れていたと分かっても、取り消せません。

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例は、相続税の申告で納めた税額の一部を取得費に加算できる制度で、この特例とは仕組みそのものが異なります。相続税を多く納めている場合はそちらの特例のほうが有利になることもあれば、控除額の大きさからこちらの特例のほうが有利になることもあります。どちらか一方しか使えないため、両方の試算を並べて比べてから確定申告に臨むことになります。

  • 売却代金の合計(分割売却・共有持分の合計を含む)が1億円以下かを確認する
  • 相続人が3人以上いる場合、令和6年1月1日以後の譲渡は控除上限が2000万円になることを知っておく
  • 配偶者や直系血族など特別な関係がある人への譲渡でないかを確認する
  • 相続財産の取得費加算の特例など、他の特例と重複していないかを確認する
  • 相続後に事業用・貸付用・居住用として使っていないかを記録で確認する
相続人の数と、一人あたりの特別控除額の上限
相続人の数譲渡の時期特別控除額の上限(一人あたり)
1人または2人令和6年1月1日以後の譲渡を含む最大3000万円
3人以上令和6年1月1日以後の譲渡最大2000万円
人数にかかわらず令和6年1月1日より前の譲渡最大3000万円

申請に必要な書類と、自治体が発行する確認書

ここまでの要件を満たしていることを、確定申告で書類として示す段階です。中心になるのは、家屋の所在地の市区町村が発行する確認書です。

この特例を確定申告で使うために必要な書類は、大きく分けて四つです。被相続人居住用家屋等確認書、登記事項証明書、耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書(耐震改修して売る場合)、そして譲渡所得の内訳書。このうち最初の一つが、この特例に固有の、いちばん重要な書類です。

被相続人居住用家屋等確認書は、売った家屋の所在地を管轄する市区町村長が発行します。これまでの章で確認してきた居住要件・家屋の要件・耐震や取壊しの要件を、自治体の側で確認したうえで交付される書類です。申請の様式や必要な添付書類は市区町村ごとに定められているため、家屋所在地の市区町村役場の窓口で、事前に案内を確認してください。

確認書の申請には、住民票の除票や戸籍関係の書類、登記事項証明書など、これまでの章で集めてきた資料の多くをあわせて提出することになります。取壊しを選んだ場合は取壊し後の状態を示す書類、耐震改修を選んだ場合は証明書の写しなど、選んだパターンに応じて追加の資料が必要になることもあります。申請から交付までに一定の日数がかかることが一般的なので、売却のスケジュールが固まった時点で早めに申請の準備を始めることをすすめます。

登記事項証明書は、法務局(登記所)の窓口かオンラインの登記情報提供サービスで取得できます。建築時期や区分所有でないことの確認(第2章)にも使いますが、確定申告の添付書類としても必要になるため、同じ証明書を複数枚取るか、有効期限に注意しながら使い回すかを決めておくと、二度手間を避けられます。

耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書は、耐震改修を行って売る場合(第3章のパターンA)にのみ必要です。取壊しを選んだ場合は、この証明書の代わりに、取壊しの事実を示す資料(工事の契約書や完了を示す書類など)を確認書の申請時にあわせて求められることがあります。どちらの資料が必要かは、選んだパターンと申請先の市区町村の案内によって変わるため、事前に窓口へ確認してください。

譲渡所得の内訳書は、土地建物を売ったときの確定申告に共通して使う書類で、売買契約書や取得費・譲渡費用の内容をもとに作成します。取得費が分かる資料(古い売買契約書、領収書、増改築の費用が分かる書類)がそろっているかどうかで、この書類の作りやすさが大きく変わります。第1章で触れたとおり、取得費が分からない場合は概算取得費(譲渡価額の5%)を使う扱いもありますが、実額が分かる資料があるなら、先に探しておく価値があります。

書類をそろえる順番としては、まず登記事項証明書で建築時期と権利関係を確認し、次に住民票の除票などで居住要件を確認し、耐震改修か取壊しかを決めて必要な証明書を用意し、それらをそろえて市区町村へ確認書を申請する、という流れが実務的です。確認書の交付を待っている間に、並行して譲渡所得の内訳書の下書きを進めておくと、確定申告の時期に慌てずに済みます。

確定申告は、売却した年の翌年に行います。特例の適用を受けるための書類一式は、申告書に添付して提出します。要件に当てはまるかどうか自体に迷いがある場合は、書類を全部そろえてから慌てて確認するのではなく、耐震改修や取壊しの計画を立てる段階、あるいは売却の契約を結ぶ前の段階で、税理士や家屋所在地の市区町村の窓口に一度相談しておくと、後戻りが少なくなります。

この特例は、要件が多く、期限も複数重なっている制度です。だからこそ、実家の売却を考え始めた時点で、相続開始日・3年の期限・建築時期・耐震か取壊しか・売却代金の見込み・相続人の数、という一連の情報を一枚にまとめておくことが、結果として一番の近道になります。整理した内容を持って税理士や不動産会社に相談すれば、最初の面談から具体的な話ができます。

書類のやり取りは、法務局、市区町村役場、税務署、そして耐震診断を担う建築士や検査機関と、窓口がいくつにも分かれます。誰にいつ何を依頼したかを一覧にしておかないと、同じ資料を二度取り寄せたり、依頼したはずの証明書の進み具合が分からなくなったりします。家族の記録に、依頼先・依頼日・受け取り予定日を並べた一覧を一枚加えておくと、複数の相続人で分担して動く場合にも共有しやすくなります。

  • 被相続人居住用家屋等確認書を、家屋所在地の市区町村役場に早めに申請する
  • 登記事項証明書は建築時期の確認と確定申告の添付の両方に使うため、取得のタイミングを決めておく
  • 耐震改修を選ぶ場合は耐震基準適合証明書・建設住宅性能評価書を、取壊しを選ぶ場合はその事実を示す資料を用意する
  • 取得費が分かる古い売買契約書・領収書を探しておく
  • 売却した年の翌年の確定申告に向けて、内訳書の下書きを早めに始める

図3確定申告で必要な書類を、二つの軸で仕分ける

確定申告で必要な書類を、二つの軸で仕分ける自分で集める書類と、市区町村や検査機関が発行する書類とで、動き方が違います。何を証明する書類かとあわせて見ると、抜けが見つかりやすくなります。横軸=誰が用意する書類か(相続人自身が集める/市区町村・検査機関が発行する) / 縦軸=何を証明する書類か(居住していた事実/家屋と譲渡の状態)相続人自身が集める書類市区町村・検査機関が発行する書類居住していた事実を示す住民票の除票・戸籍の附票被相続人が住んでいたことや相続関係を示す書類。本籍地・最後の住所地の市区町村窓口で取得する。被相続人居住用家屋等確認書家屋の所在地の市区町村長が発行する、この特例の中心書類。居住状況などを確認したうえで交付される。家屋と譲渡の状態を示す登記事項証明書・譲渡所得の内訳建築時期や区分所有でないことの確認にも使う登記事項証明書と、売却代金や取得費をまとめた内訳書を用意する。耐震基準適合証明書・建設住宅性能評価書耐震診断を行った建築士や検査機関が発行。耐震改修して売る場合に必要で、取壊しの場合は別の資料に置き換わる。取壊しを選んだ場合は、耐震基準適合証明書の代わりに取壊しの事実を示す資料が必要になる。どちらが要るかは申請先の市区町村へ確認する。
自分で集める書類と、市区町村や検査機関が発行する書類とで、動き方が違います。何を証明する書類かとあわせて見ると、抜けが見つかりやすくなります。

このページ固有の確認メモ

ここからは「相続空き家の3000万円特別控除|実家で使える条件を順に確認」で特に確認したい内容を、事実、避けたい判断、手元資料に分けて示します。すべてを一度に終える必要はありません。確認できた項目には日付と根拠を添え、分からない項目には担当者と再確認日を付けてください。家族が別々の時間に作業しても、同じ一覧へ戻れる状態を目指します。

確認しておく事実

この欄は、方針を決める前に共有したい事実です。家族の記憶だけで確定せず、通知書、契約書、公式ページ、撮影日が分かる写真など、確認に使った根拠を隣へ書きます。該当しない項目も削除せず「該当なし」とした理由を残すと、後から同じ調査を繰り返さずに済みます。

  • 相続空き家の3000万円特別控除は、居住要件・家屋の要件・耐震または取壊しの要件・価額と人数の要件をすべて満たす必要がある
  • 売却期限は相続開始日から3年目の12月31日で、遺産分割が長引くほど不利になる
  • 家屋は昭和56年5月31日以前の建築であること、区分所有建物でないことが条件になる
  • 耐震基準を満たす・取り壊す・期限内に改修や取壊しを終える、の三つのパターンから選ぶ
  • 相続人が3人以上だと、令和6年1月1日以後の譲渡で控除上限が一人2000万円になる
  • 被相続人居住用家屋等確認書は家屋所在地の市区町村長が発行する、この特例の中心書類

避けたい判断

この欄に当てはまる可能性があるときは、契約や処分をいったん止めます。一般例を対象の家へ当てはめたのか、資料で確かめたのかを区別し、不足情報を質問へ直してください。法務、税務、測量、建物、行政など別分野の判断が必要なら、回答できる相談先へ切り分けます。

  • 遺産分割協議を優先するうちに3年の期限が近づいていることに気づかない
  • 耐震基準適合証明書を売買契約後に慌てて依頼し、引渡しに間に合わない
  • 取壊しを部分的に済ませただけで、全部の取壊しという要件を満たしていない
  • 分割して売った代金の合計が1億円を超え、特例の対象から外れる
  • 相続後に一時的に貸したり使ったりしたことで、譲渡までの使用要件から外れる

手元で探すもの

見つけた資料には名称、発行年、原本の保管者を記します。古い資料も経緯を知る手掛かりになるため、最新版と違うだけで捨てないでください。見つからない場合は空欄にせず、再取得できるか、誰に所在を尋ねるか、いつ再確認するかを決めると次の相談準備になります。

  • 相続開始日と、3年目の12月31日という個別の期限
  • 登記事項証明書に記載された建築時期と家屋の種類
  • 住民票の除票・戸籍の附票で確認した居住状況
  • 耐震改修・取壊し・期限内対応、どのパターンを選ぶか
  • 売却代金の見込みと1億円以下かどうかの判定
  • 相続人の人数と、控除上限が2000万円になるかどうか
  • 被相続人居住用家屋等確認書の申請状況
  • 取得費が分かる古い売買契約書・領収書の有無

よくある質問

この特例は、自分が住んでいた家を売るときの3000万円特別控除と同じですか

名前は似ていますが別の制度です。相続空き家の特例は、亡くなった方が住んでいた家を相続人が売る場合の制度で、居住要件・家屋の要件・耐震改修や取壊しの要件などが定められています。自分が住んでいた家を売るときの特例とは要件が異なるため、どちらに当たるかは税理士に確認してください。

3年の期限はいつから数えますか

相続の開始があった日、つまり被相続人が亡くなった日から数えて3年を経過する日が属する年の12月31日までに売る必要があります。例えば相続の開始が令和8年中であれば、3年を経過する日が属する年は令和11年になるため、期限はその年の12月31日です。この期限を過ぎると特例は使えなくなるため、遺産分割協議が長引きそうな場合ほど早めに専門家へ相談することが大切です。

家に取り壊す予定がなくても対象になりますか

家屋の要件と耐震・取壊しの要件を満たせば対象になります。売却の時点で耐震基準適合証明書などにより現行の耐震基準を満たしていることを証明できれば、家屋を残したまま売ることもできます。建物が昭和56年5月31日より後に建築されている場合や、区分所有建物(マンション等)の場合は対象外なので、まずは登記事項証明書で新築年月日と家屋の種類を確認してください。

相続人が複数いる場合、それぞれが確定申告する必要がありますか

特例の適用は相続人ごとの譲渡所得に対して判定されるため、共有で売却した場合は各相続人がそれぞれ確定申告で適用を受ける形になります。相続人が3人以上いる場合は、令和6年1月1日以後の譲渡について一人あたりの控除上限が2000万円になる点も確認してください。

売却代金が1億円を超えたらどうなりますか

譲渡対価の合計額(分割して売った部分や他の相続人が売った部分も含む)が1億円を超えると、特例の対象から外れます。金額の判定は個別の事情によって扱いが変わるため、契約前に税理士へ確認しておくことをすすめます。

老人ホームに入っていた親の家でも対象になりますか

老人ホーム等への入所により相続開始の直前に住んでいなかった場合でも、要介護認定を受けていたことなど一定の事由(特定事由)を満たせば「従前居住用家屋」として対象になる仕組みがあります。要件の当てはめは個別の事情によるため、税理士や国税庁の案内で確認してください。

公式出典・確認先

制度や受付条件は変わることがあります。最終判断の前に、リンク先の最新情報と担当窓口を確認してください。

  1. 国税庁|被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例確認日:
  2. 国税庁|譲渡所得の計算のしかた(分離課税)確認日:
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大石 浩之

富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役・宅地建物取引士(静岡県知事 第027186号)。静岡県磐田市見付を拠点に、磐田市・袋井市・森町・掛川市・菊川市・御前崎市・湖西市・浜松市で、相続不動産・空き家・実家じまいの相談に対応。家族が次に確認する事項を、判断を急がず、地域の実務と公的情報を分けながら整理しています。