古家付き土地の等価交換|総額2000万円でも残る税負担
2026年11月4日|不動産実務

Q. 同じ2000万円の物件どうしなら、古家が付いていても税金の心配はありませんか?
A. 土地と古家を更地と交換すると、総額が等しくても建物部分は固定資産の交換の特例の対象外です。国税庁の例の200万円は建物の時価で、納税額ではありません。土地と建物を分け、渡す人と受け取る人それぞれの資料で税額を確認します。
同じ2000万円を、土地と建物に分け直す
国税庁タックスアンサーNo.3511が示すのは、時価1800万円の土地と時価200万円の建物を、時価2000万円の土地と交換する例です。2026年4月1日現在の法令等に基づく説明を、同年11月4日に確認しました。お互いが差し出す財産の総額は2000万円です。現金の受け渡しがなくても、合計の下にある「何を渡したか」を見ます。
紙を縦に二つに折り、左に古家の持ち主、右に更地の持ち主と書いてください。左側の土地の欄に1800万円、建物の欄に200万円。右側の土地の欄には2000万円、建物の欄には横線を引きます。合計額だけを二本並べたときに見えなかった、右側の建物欄の空白が、この取引の要所です。
固定資産の交換の特例とは、個人が一定の要件で同じ種類の固定資産を交換したとき、所得税の計算で譲渡がなかったものとして扱う仕組みです。土地と建物は別の種類です。建物が土地と同じ売買契約書に書かれていても、建物まで土地の一部として特例に載せられるわけではありません。
古家を渡す側は、建物を譲渡したものとして考える
国税庁No.3511では、土地と一緒に古家を渡した人は、建物については通常の譲渡として扱われます。受け取る側に交換相手となる建物がないためです。建物を無償で付けたつもりでも、例では建物に200万円の時価があります。その金額を合計欄に含めておきながら、税金の計算だけ建物を消すことはできません。
ここで私は、持ち主の方に建物の資料を別の封筒にまとめることを提案します。購入したときの契約書、建築代金の資料、購入後に行った工事の明細、取得の経緯が分かる書類です。一つの契約で土地と建物を取得したなら、内訳がどこに記載されているかを探します。売るときの時価と、買った当時に払った代金は別の数字です。
建物について譲渡所得を考える際は、取得にかかった金額を当初のまま差し引けばよいとは限りません。建物の利用状況や経過期間に応じた取得費の確認が必要です。建物の取得費と減価の計算を見ながら、居住用だった時期と貸していた時期を書き出します。直ちに誰にいくらの税金が出るかは、この設例の金額だけでは計算できません。
取得当時の資料が一部しか残っていなければ、空欄を概算で埋めて相手へ渡す前に、確認済みの額と調査中の額を分けます。古家に値打ちを感じないという持ち主の感想と、交換時の建物価額をどう説明するかは別の課題です。解体の見積書を一枚取っただけで、交換時の時価が自動的にゼロに決まるわけでもありません。
更地を渡す側は、受け取る建物に注目する
更地の持ち主は、時価2000万円の土地を渡し、時価1800万円の土地と200万円の建物を取得します。国税庁No.3511によると、この人は建物の価額に相当する交換差金を受け取った扱いになります。交換差金とは交換で生じる価値の差を調整するものです。手元に現金200万円が入ってこなくても、この取扱いがあります。
紙の右側には「入金なし」と「建物価額相当200万円」の二行を残します。前者は家計の入出金、後者は税金を検討するための金額です。200万円をそのまま納税資金として確保すべきだ、という計算にはなりません。反対に、通帳に入金がないという理由だけで納税の検討を終えることもできません。
更地を渡す人にとって私が気になるのは、受け取る古家を今後どう使い、手元にどれだけ現金を残せるかです。鍵を受け取った後に修繕する費用と、交換に伴う税金や登記の費用を一つの予算に押し込むと、どこに余裕があるか分からなくなります。費用の種類ごとに見積りの担当者を決めます。
| 立場 | 資料 | 確認する理由 |
|---|---|---|
| 古家の持ち主 | 建物の取得時資料・利用の経緯 | 譲渡する建物の取得費を確認 |
| 更地の持ち主 | 渡す土地の取得資料・取得後の用途 | 建物価額相当の交換差金を確認 |
| 双方 | 土地と建物を分けた評価資料 | 評価時点と前提をそろえる |
建物200万円は分子、渡す土地2000万円は分母
国税庁No.3511は、受け取る建物の価額が渡す土地の価額の20%を超えると、土地についても交換の特例を受けられないと説明しています。設例では、更地を渡す人が受け取る建物200万円を、更地の価額2000万円で割ります。200÷2000=0.10、つまり10%です。古家付きの側の土地1800万円を分母にする計算ではありません。
比較用に、合計を同じ2000万円としたまま、建物が500万円、土地が1500万円と仮定します。更地を渡す人から見ると、500÷2000=25%です。二組とも合計の金額は同じです。それでも後者は20%を超えます。この500万円は違いを説明するための仮定で、古家の相場でも、市内の取引事例でもありません。
国税庁No.3502には、双方の資産の保有期間や、取得した資産を交換直前と同じ用途に使うことなど、ほかの条件も示されています。10%という計算に丸が付いても、土地に必ず特例が使えるわけではありません。土地の交換特例と20%の考え方を参照し、どの条件を誰の資料で確認したかを残します。
国税庁の設例の良いところは、受け取る建物があるだけで、同じ契約の売り手と買い手で確認する欄が変わると分かる点です。私が注文を付けたいのは「等価ですから大丈夫」という見積りの一文です。土地の評価根拠、建物の評価根拠、適用を想定する特例、その前提の四つが見えないからです。
取引相手の試算を、自分の税額に写さない
二人が同じ日に交換契約へ署名しても、土地や建物を取得した日はそれぞれ違います。一方が長く持っていた土地と、もう一方が買ったばかりの土地では、資料を確認する順番から違います。相手が相談した税理士の回答を伝え聞いたら、どちら側の、どの資産に対する回答かを余白に添えます。
税理士に聞く質問も分けられます。古家を渡す人なら「取得当時の契約書の内訳が見当たりません。建物の取得費を確認するため次に何を探せばよいですか」。更地を渡す人なら「受け取る建物の評価根拠はこの資料です。土地の特例を検討するのに私の保有期間と用途が分かる書類はどれですか」。具体的な問いなら、面談から帰った後の宿題も分かれます。
契約前に税理士へ渡す一枚を作る
私は大石浩之(磐田市/不動産業)です。私はこう考えます。現金を用意しなくても成立する交換は、ご家族の希望に合うかもしれません。一方、支払う税額や費用を誰も計算していない段階で「持ち出しなし」と案内することはできません。まず交換する二つの財産を同じ基準日の数字で並べ、古家の欄を独立させます。
査定を頼むときは、土地の価格を参考にした資料の時点と対象地点を控えます。土地の価格を地図で調べる手順は、資料の種類を整理する入口になります。地図に示された価格だけで建物の価額まで決めることはできません。評価の前提が違う数字どうしを比べて「同額」と書いていないかを仲介担当者に聞きます。
私が迷うのは、双方が早く合意したい場面でどこまで数字を待つかです。交換したい理由や引渡し希望日は先に共有できます。建物の評価が決まらないなら、未確定と書いた資料を税理士へ渡し、何が分かれば試算できるかを聞くほうが話は進みます。仮額を確定額に見せないことは、相手との交渉を守ることにもなります。
今日できるのは、紙に「自分が渡す土地・建物」「相手が渡す土地・建物」の四欄を設けることです。金額の資料がない欄には資料名と入手先を書きます。双方の税負担を同じとみなさず、自分の取得費や利用状況を持参して、税務は税理士に、登記・契約の個別判断は専門家に確認を。
よくある質問
古家付きの土地と更地を交換する際に出てくる、税額と評価の疑問です。
建物の時価200万円は、そのまま納める税金ですか?
200万円は国税庁の設例における建物の価額です。建物を渡す側では建物の譲渡、受け取る側では建物価額に相当する交換差金として整理します。取得費や譲渡費用、特例の要件などは各人で異なるため、この金額だけで納税額は決まりません。
建物の割合がちょうど20%なら土地は自動的に対象ですか?
国税庁No.3511が土地についても適用できないとするのは、受け取る建物の価額が渡す土地の価額の20%を超える場合です。ちょうど20%なら、この割合だけで適用の可否は決まりません。固定資産かどうか、保有期間、交換後の用途なども個別に確認します。
契約案に総額しか書いてありません。何を準備しますか?
土地と建物の内訳、価額を見た時点、その根拠となる資料を双方で整理します。契約書に数字を書き込む前に、受け取る建物と渡す土地の価額を誰がどう見積もったかを確認します。取得時の書類も用意し、税理士に自分側の試算を依頼してください。
売ると決める前の資料整理から
実家カルテ・実家じまい相談室・相続はじめ相談室で、今後の段取りを整理できます。
相談・調査・査定の申込みには、物件所在地を番地・地番までご記入ください。不明な場合は固定資産税の課税明細書や登記書類で確認してください。
富士ヶ丘サービス株式会社|0538-31-3308
介護施設の運営から不動産事業を始めた富士ヶ丘サービスのような地域の相談窓口では、ご家族が動ける日と手元にある資料から段取りを考えます。電話 0538-31-3308。
参考にした公式情報
2026年11月4日確認。
本記事は一般的な情報と筆者の意見です。制度・数値・運用は変わる場合があります。重要事項、契約、税務・登記・相続の個別判断は、担当窓口と各分野の専門家に確認を。
