貸家売却の敷金精算、相続後に確認する3資料
2026年10月18日|大石浩之の不動産ブログ

この記事の要点
Q. 親から相続した貸家を売ると、預かっている敷金はどうなりますか?
入居中の貸家を通常売買で引き継ぐ場合、敷金返還義務は新しい貸主へ承継されます。売主と買主の間で資金をどう精算するかは別に確認します。賃貸借契約書、預り金の記録、売買の精算案をそろえ、対象額と支払方法を照合してください。
親から相続した貸家を売るとき、家賃の入金は確認しても、敷金の資料まで手が回らないことがあります。売買価格が決まった段階で初めて預り金を探すと、決済の準備が増えます。先に確認したいのは、借主ごとの契約と残高です。
大石浩之(磐田市/不動産業)です。宅地建物取引士として、私は売却代金の数字と、自由に使えるお金を分けて考えます。本記事は体験談ではなく、公式資料に基づく私の実務上の意見です。
貸家を売ると敷金返還義務も引き継がれる
国土交通省の原状回復に関するQ&Aは、貸主が建物を第三者へ売り、その第三者が新たな貸主になる場合、敷金返還義務は新しい貸主へ承継されると説明しています。本文の確認日は2026年10月18日です。
意外に思われるかもしれませんが、建物を売ったからといって、その日に借主へ敷金を返す説明にはなっていません。入居が続く通常売買では、退去時などに返す義務を新たな貸主が引き受けます。借主との関係を終える話と、所有者が交代する話は分けて読みます。
ここで混同したくないのが、借主に対する返還義務と、売主から買主へ移すお金です。国のQ&Aは義務の承継を説明しています。売買代金から差し引くか、別に送金するかという決済の方法は、売買契約と精算案で確かめる事項です。
国土交通省は、抵当権が実行された競売では、抵当権の登記と賃貸借の先後によって扱いが異なることも示しています。本記事は、相続した貸家を入居中のまま通常売買する場面に絞ります。競売の物件へ同じ図式を当てはめません。
2026年10月1日から31日は、国土交通省が案内する住生活月間です。相続した家の契約資料を見直すきっかけとして取り上げます。敷金について10月から新しい制度が始まったという記事ではありません。
資料1・賃貸借契約書で預り金の性質を確認
敷金の確認は、借主ごとの賃貸借契約書から始めます。国土交通省のQ6では、未払賃料や損害などを担保するために預かる金銭を敷金と説明しています。「保証金」という名前でも、同じ性質なら敷金に当たります。
私は金額だけを抜き出さず、契約の相手、対象の建物、預り金の名称、返還に関する条項を一緒に控えます。更新契約や覚書が別紙にあるなら、それも一組にします。最初の契約書だけでは、その後の合意が分からないことがあるためです。
礼金、前払家賃、敷金を一つの「入居時のお金」として扱うと、売却時の整理が曖昧になります。返す性質のお金なのか、既に受け取った対価なのかは、名称と契約内容を照合して確認します。判断が難しい特約は、仲介担当だけで結論を出さず専門家に確認します。
原状回復とは、借主が住む前の新品状態へ戻すことではありません。国のQ5は、通常の使用や経年変化による損耗について、原則として借主の負担にしない考え方を示しています。特約の有効性も関わるため、「古い貸家だから敷金は全部修理に使う」と売主側で決めないようにします。
相続後の申告準備も残っている方は、賃貸不動産を相続したときの青色申告期限を別に確認できます。税務の手続と敷金の引継ぎは、同じ契約書を使っても確認する目的が異なります。
資料2・入金と残高の記録を照合
預り金の記録は、契約書に書かれた金額と実際の入金を照合するための資料です。領収書、通帳、管理会社の台帳など、入金の事実と現在の扱いを説明できる記録を集めます。
私は、契約書に敷金20万円と書かれているだけで、手元にも20万円あるとは判断しません。親が受け取ったときの入金先と、現在管理している口座は違うかもしれません。記録が見つからない場合は「未確認」と記し、ゼロ円と置き換えないようにします。
家賃の滞納や一部返金の記録がある場合も、売主が独自に差し引いて引継額を決めるのは避けます。何月の家賃か、どの支払が済んでいるか、どんな合意があったかを確認します。債権や敷金の充当について争いがあるなら、弁護士への確認が必要です。
| 資料 | 照合する内容 |
|---|---|
| 賃貸借契約書・覚書 | 借主、物件、敷金の約定、変更内容 |
| 領収書・通帳・管理台帳 | 実際に受け取った額、返金や入金の記録 |
| 売買契約・決済の精算案 | 承継する額、精算方法、双方の確認欄 |
記録がそろわないとき、私はまず管理会社へ問い合わせる窓口を一本にします。複数の相続人が別々の数字を伝えると、どれが確定した情報か分からなくなるためです。借主へ照会する必要がある場合も、相続関係と担当者を整理し、個人情報を必要な範囲で扱います。
資料3・売買の精算案で二重計上を防ぐ
売買の精算案では、売買代金と敷金の引継ぎを別の行で確認します。返還義務が買主へ移るという説明だけでは、売主が決済日に受け取る金額は確定しません。
説明用の仮例です。売買代金1,000万円、確認できた敷金20万円とします。売買代金から敷金相当額を差し引く合意なら、この2項目だけの受取額は980万円です。別送金の合意なら、1,000万円の入金と20万円の支出を別々に追います。仲介手数料や税金などは含めていない例です。
同じ20万円を代金から引き、さらに別送金すれば二重の支出になります。逆に、代金から引いたつもりでも書面に記録がなければ、双方で認識がずれます。私は、預り金は売却の利益として数えない、と言い切ります。自由に使える残額を知るには、精算の経路まで見る必要があります。
家賃の日割りなどが同じ精算書に入る場合も、敷金とまとめて差額だけを記さない形を勧めます。項目名、対象期間、金額、誰から誰へ動くお金かを分けます。実際の取引の金額や日割りの方法は、契約の合意を確認してください。
手残り全体の考え方は、売却を手取りで考える記事で扱っています。本記事の20万円は相場や標準額ではなく、計算の区切りを示すための仮定です。自分の貸家では、資料で確認できた金額に置き換えます。
制度の良い点は、通常売買で貸主が交代しても、借主への返還義務の行き先が整理されていることです。借主が退去するまでの契約関係を続けながら、不動産を譲り渡す道筋があります。建物の引渡しだけで終わらないことが明確です。
その上で私が注文したいのは、売買の説明でも預り金の資料を省かないことです。相続人が元の受取りを知らない場合、売価だけを先に決めると、後から確認する仕事が増えます。契約書と残高記録を早い段階で見せ合う方が、精算の合意を作りやすいと私は考えます。
磐田・袋井で売る前に資料を一組にする
磐田市・袋井市の貸家を相続して売る方は、物件ごと、借主ごとに3資料を一組にします。戸建て1軒でも、契約の更新や管理会社の交代があれば、資料が分かれている場合があります。
私は資料が足りないとき、売却準備をどこまで進めるかには迷いが残ります。記録を探す間にも、査定に必要な建物や土地の確認は進められます。ただ、敷金額が確定したものとして決済日を固める判断はしません。確認できた額と未確認の事項を分けて案内します。
決済当日のお金の流れを確認するときは、敷金の欄も合わせて見ます。今日できるのは、契約書を1通探し、預り金の記録がどこにあるか家族へ共有することです。売ると決める前でも、この準備はできます。
私はこう案内します。まず貸家の売値とは別に、預り金を説明できる状態を作る。借主への通知や引継ぎは仲介会社・管理会社と段取りを合わせる。相続、契約、税務の個別判断は、それぞれの専門家に確認してから条件を確定します。
よくある質問
売主とご家族が確認する事項を、三つの質問に分けて記します。
- 売却時に借主へ敷金を返しますか?
- 入居が続く通常売買では、国土交通省のQ&Aは敷金返還義務が新しい貸主へ承継されると説明しています。売却そのものを退去と同じに扱い、借主へ返すと決める話ではありません。借主との契約と、売主・買主間の精算を分けて確認します。競売は抵当権と賃貸借の先後などで扱いが異なるため、専門家に確認してください。
- 親が預かった敷金の記録がありません。どうしますか?
- 賃貸借契約書、領収書、通帳、管理会社の台帳を順に照合し、未確認の額をゼロと扱わないようにします。一部返金や滞納があれば、その記録と合意内容も確認します。借主への照会が必要な場合は、相続関係と担当者を整理してから進めます。返還義務や充当の扱いに争いがあるときは、弁護士など専門家に確認してください。
- 敷金の全額を売却代金から引くのですか?
- 売買代金から差し引く方法がすべての契約で決まっているわけではありません。敷金返還義務の承継と、売主・買主間の精算方法は別に確認します。契約書と預り記録で対象額を照合し、差引きか別送金かを精算案に明記します。同じ額を二重に支払わないよう、決済前に仲介会社を交えて双方で確認してください。
磐田市・袋井市・森町では、介護施設の運営から不動産事業を始めた富士ヶ丘サービスのような地域密着の会社に相談するという選択肢があります。
売ると決める前の資料整理から
実家カルテで名義・道路・境界を整理し、実家じまい相談室で次の段取りを確認できます。相続の資料は相続はじめ相談室もご利用ください。
富士ヶ丘サービス株式会社|0538-31-3308
参考にした公式情報
出典は2026年10月確認(確認日:2026年10月18日)。公表日、法令の基準日、実施期間は区別して記載しています。
本記事は2026年10月18日に確認した一般的な情報です。制度・数値・手続は変わる場合があります。重要事項・税務・登記・相続・契約の個別判断は、税理士・司法書士・弁護士・宅地建物取引士など各分野の専門家に確認を。個別の対象や申請条件は担当窓口で確認してください。
