ATAWI FUDOSAN 富士ヶ丘サービス株式会社

Column 11

雨漏りとシロアリ、
直す順番を間違えないでください。

空き家を貸せる状態に戻したい。そうお考えになったとき、多くの方がまず思い浮かべるのは壁紙や畳、キッチンです。ところが実際の現場では、そこに手をつける前にやるべきことが必ずあります。順番を間違えると、直したところが一年後にまた同じようにやられます。

雨漏りシロアリ修繕リフォーム費用対効果

「リフォームしないと貸せませんよね」。ご相談の初期に、必ずと言っていいほど出てくる言葉です。そして多くの方が、数百万円かかるものと覚悟して来られます。

実際には、そこまで必要ないことのほうが多いのです。ただし条件があります。直す順番を守ること。この順番を無視して、見た目のきれいなところから手をつけてしまうと、費用が二倍にも三倍にも膨らみます。しかも一年後に同じところをやり直すことになります。

この記事では、私たちが現場で使っている優先順位を、そのままお伝えします。

第一優先は、水が入ってくる経路を止めること

最初にやるべきは、雨漏り・漏水・シロアリの三つです。理由は単純で、この三つだけが放置すると被害が広がり続ける性質を持っているからです。

壁紙が古いことは、それ以上悪くなりません。畳が傷んでいることも、そこで止まります。ところが雨漏りは違います。屋根から入った水は、野地板を濡らし、垂木を伝い、小屋組の木材を濡らし続けます。木が濡れた状態が続けば腐朽菌が繁殖し、木材の強度が落ちます。そして湿った木材はシロアリを呼びます。一か所の雨漏りが、放っておけば構造全体の問題に育つのです。

漏水も同じです。給水管のわずかな漏れは、床下を常に湿らせます。床下が湿れば、そこもまたシロアリの好む環境になります。この地域の在来工法の家では、床下の湿気対策が建物の寿命を大きく左右します。

シロアリは、日本の木造住宅にとって最大の敵です。土台や柱の内部を食い進むため、外から見て分からないまま被害が進行します。床がぶかぶかする、と気づいたときには、その下の土台がほとんど残っていないこともあります。この地域で扱われる木造戸建てでは、床下の点検はほぼ必須だと考えてください。

では、専門家に見てもらう前に、ご自身で気づける手がかりはあるのか。いくつかあります。雨漏りなら、天井や壁の上部にできた輪郭のあるシミ。乾いた跡でも、輪郭が茶色く縁取られていればほぼ確実です。押入れの天井、和室の長押の上、階段の上の壁——こうした目につきにくい場所を見てください。屋根に上がる必要はありません。室内から分かります。

シロアリなら、まず玄関まわりと浴室の周辺です。この二か所は湿気がこもりやすく、被害の出やすい場所です。床を踏んでみて沈む感じがある、柱を叩くと軽い音がする、春先に羽アリを見た——これらは危険信号です。土台や基礎に、土でできた細い筋(蟻道)が上がっていれば、その時点で専門業者を呼んでください。

そして床下は、点検口から覗くだけでも情報が得られます。台所や洗面所の床にある点検口を開け、懐中電灯で照らす。地面が濡れている、カビ臭い、木材が黒ずんでいる。この三つのどれかがあれば、床下に問題を抱えています。私たちが現地を見るときも、必ずここを開けます。建物の本当の状態は、床下と小屋裏に出ます。

優先項目費用の目安放置したときの帰結
1屋根・雨樋・外壁の雨仕舞い部分補修 10万〜40万円/葺き替え 100万円〜構造材の腐朽へ
1給排水の漏れ5万〜30万円床下の腐朽・シロアリ誘引
1シロアリ駆除・防蟻15万〜30万円(被害材の補修は別)土台・柱の強度低下
2給湯器・コンロ・トイレ・水栓合計 20万〜60万円そもそも人が住めない
2電気・ガスの安全確認2万〜10万円入居後の事故リスク
3クロス・床・畳・清掃20万〜80万円賃料と決まりやすさに影響
3外壁塗装・外構60万円〜見た目の印象のみ
この順番を守るだけで、無駄な出費が消えます 1|止める 雨漏り・漏水・シロアリ 放置すると被害が広がり続けるのは、この三つだけ。ここを飛ばした工事は必ずやり直しになります。 2|動かす 給湯器・コンロ・トイレ・水栓 最新である必要はありません。確実に動くことだけが条件です。 3|整える クロス・床・畳・清掃・塗装 費用対効果で判断する領域。全部やっても、家賃が同じだけ上がるとは限りません。
図11を飛ばして3から始めるのが、いちばんよくある失敗です。

「動けばいい」の段階を、過剰にしないこと

第一段階が終わったら、次は人が生活できる状態にすることです。給湯器が動く、コンロが使える、トイレと風呂が使える、水が出る。ここが揃わなければ、そもそも入居できません。

ただし、ここで過剰投資をされる方が非常に多い。「どうせ替えるなら最新のシステムキッチンに」「ユニットバスごと入れ替えよう」。気持ちは分かりますが、戸建て賃貸を探している方は、新築アパートのような設備水準を求めていません。

この地域で戸建てを借りたい方の動機は、はっきりしています。駐車場が二台、三台とれること。庭があること。上下階に音を気にしなくていいこと。収納が広いこと。設備の新しさは、その次です。百万円かけてキッチンを入れ替えても、家賃が月一万円上がるとは限りません。回収に何年かかるかを計算してから決めてください。

意外と見落とされるのが、止まっているライフラインの再開です。何年も電気・ガス・水道を止めていた家は、契約を再開するだけでは済まないことがあります。電気ならブレーカーや配線の劣化確認、ガスは開栓時に配管の気密検査があり、漏れがあれば工事が必要です。水道も、長期間使っていない配管は錆や赤水が出ますし、給湯器の内部で凍結による破損が起きていることもあります。

これらは入居の直前に発覚すると、日程がまるごと崩れます。募集を始める前の段階で、一度すべて通してみることをお勧めします。費用としては数万円程度で済むことが多く、ここで見つかった不具合は第二段階の工事にまとめられます。私たちが現地確認に伺うときも、可能であれば通電・通水まで確認します。

私たちが募集をお預かりするときは、直す範囲を必要最小限でご提案します。売買仲介が本業なので、リフォーム工事で利益を取る必要がないからです。むしろ、かけた費用が回収できずにオーナー様が損をされるほうが、私たちにとっても困ります。

見た目で効くのは、実は「臭い」です

第三段階の見た目については、費用対効果の判断になります。ここで一つだけ、確実に効くものを挙げるなら——臭いを取ることです。

長く閉め切られた家には、独特の匂いが染みついています。カビ、埃、古い畳、押入れの湿気。内見に来た方が玄関を開けた瞬間、最初に受け取るのがこの情報です。間取りを見る前、設備を見る前に、印象が決まってしまいます。

臭いの元は、多くの場合、畳・押入れ・水回りの三か所に集中しています。ここを徹底的に清掃し、必要なら畳を替え、押入れの壁を張り替える。金額としては数万円から数十万円で収まることが多く、同じ金額を外壁塗装に使うより、決まりやすさへの効果ははるかに大きいというのが実感です。

もうひとつ、決まりやすさに効くのが写真に写る状態です。今の入居希望者は、ほぼ全員がまずインターネットで写真を見ます。そこで候補から外れれば、内見にすら来てもらえません。写真で目立つのは、床、壁、水回り、そして庭です。逆に言えば、写真に写らない部分に費用をかけても、集客には効きません。

費用をかけずに写真映えを改善する方法もあります。荷物を完全に出して空にする、カーテンレールだけ残して窓を全開にする、庭の草を刈って外観を撮る、晴れた日の午前中に撮影する。これだけで印象はかなり変わります。数十万円のクロス張替えより、この段取りのほうが効くこともあるというのが正直なところです。

「現況渡し」という選択肢もあります すべてを直してから貸すのではなく、現在の状態のまま、条件を明示して貸すという方法もあります。設備が古いこと、一部が使えないことを契約前に書面で確認していただき、その分だけ賃料を抑える。DIYを許容する条件にすれば、自分で手を入れたい方に響くこともあります。ただし、これは「雨・水・シロアリが止まっている」ことが大前提です。そこが止まっていない家を現況で貸すと、入居後にトラブルになります。

直さないほうがいい家も、あります

ここまで直す前提で書いてきましたが、正直に申し上げます。直しても割に合わない家は、確かに存在します。

判断の目安はこうです。必要な工事の総額を、想定家賃で割ってみてください。それが回収年数です。三百万円かかる家を月六万円で貸せば、四年二か月。この間、修繕リスクはオーナー様が背負い続けます。給湯器がもう一度壊れれば、回収はさらに延びます。

私たちが目安にしているのは三年です。三年以内に回収できる見込みがあれば、貸すことをお勧めします。五年を超えるなら、解体して更地で売る、あるいは現況のまま古家付き土地として売る道を、同じ土俵に乗せて比べたほうがいい。この計算を出さずに「とりあえず直しましょう」と言う会社があれば、少し疑ってください。

回収年数で、貸すか売るかを決めます 必要な工事の総額 ÷ 想定家賃(年額)= 回収年数 3年以内 貸すことをお勧めします 例)修繕150万円 家賃6万円 → 約2年1か月 3〜5年 条件次第。要検討 立地が良ければ貸す 売り時が近いなら売る 5年超 売却・解体を同じ土俵に 修繕リスクを何年も 背負い続けることになる ※ 目安です。立地、建物の残存年数、ご家族の方針によって判断は変わります。
図2感覚ではなく、この割り算で決めてください。数字が出れば、ご家族の合意も得やすくなります。
実際にお受けした相談から(再構成) 「業者に見てもらったら、水回り一式の入れ替えで三百二十万円という見積りでした。それで諦めかけていたところ相談して、優先順位を整理してもらったんです。雨樋の補修とシロアリの防除、給湯器の交換と清掃で九十万円。それで月六万五千円の借り手がつきました」——見積りは、頼んだ相手の得意分野に寄ります。工事で利益を取らない立場の意見も、一度聞いてみてください。

最後に、見積りの取り方について。工事の見積りは、必ず二社以上から、同じ条件で取ってください。同じ屋根の補修でも、部分補修で提案してくる会社と、葺き替えを前提に出してくる会社があります。金額が三倍違うこともあります。どちらが正しいということではなく、前提が違うのです。だから見積書を比べるときは、金額ではなく「何をやる前提か」を比べてください。

そして、その前提を決めるのは本来オーナー様です。「あと何年、この家を使うのか」によって、正解は変わります。三年後に売るつもりなら、屋根は部分補修で十分かもしれない。二十年貸し続けるつもりなら、葺き替えたほうが結局安い。出口の時期が決まっていないまま工事の話を進めると、業者の提案に流されます。私たちが最初に「この家をいつまでどうしたいですか」とうかがうのは、そのためです。

私たちが管理費0円でお預かりする理由

富士ヶ丘サービスは、磐田市で介護施設を運営しながら、宅地建物取引業者として不動産の相談を受けてきた会社です。本業は売買仲介です。それなのに、なぜ管理料をいただかずに戸建てをお預かりするのか。

いずれ売る日が来たとき、その売却をご一緒できればそれで成り立つからです。だから貸している間の管理料は0円で、その代わり、預かっている間ずっとその家の状態と相場を見続けます。そして、この立場だからこそ「直さないほうがいい」と申し上げられます。リフォームの利益も、賃貸管理料も取らないので、オーナー様に工事をしていただく動機がないからです。

現在、磐田市・袋井市を中心に9件を管理費0円でお預かりし、すべてに借主がついています。0円なのは管理料であって、修繕費・原状回復費・固定資産税・火災保険料といった実費と、賃貸借契約時の仲介手数料は別途かかります。そこを曖昧にするつもりはありません。

この記事のまとめ

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本記事は2026年8月時点の一般的な整理であり、個別の建物に必要な工事の判断や見積りではありません。記載した費用の目安は磐田市・袋井市周辺の在来工法の木造戸建てを想定したもので、被害範囲・構造・立地・施工条件によって大きく異なります。実際の判断にあたっては、現地調査と複数社の見積りを必ずお取りください。当社は宅地建物取引業者として、不動産の状態確認・賃料の見立て・募集と管理の部分をお手伝いします。