ATAWI FUDOSAN 富士ヶ丘サービス株式会社

Column 07

空き家は、
住まなくなった日から傷み始めます。

「しばらくこのままにしておいて、落ち着いたら考えよう」。空き家になった実家について、多くのご家族がそう決めます。その判断自体は責められるものではありません。ただ、ひとつだけ知っておいていただきたいことがあります。家は、待ってはくれません。しかも傷み方には順番があり、どこで手を打つかで、必要になるお金が桁で変わります。

空き家建物の劣化カビ雨漏りシロアリ

私たちは仕事柄、空き家になった家を年に何十軒と見ます。玄関を開けた瞬間の匂いで、だいたい何年空いているか分かるようになりました。三か月、一年、三年、五年——それぞれに特徴的な傷み方があり、そこには明確な順番があります。

この記事は、脅かすために書くものではありません。むしろ逆です。順番が分かっていれば、どこで手を打てばいいかが分かります。そして早い段階で手を打てば、多くの場合、大きな出費をせずに済みます。今ご実家が空き家になっている方に、現在地を知っていただくための記事です。

最初の三か月に起きること

まず、多くの方が想像していないところから始まります。排水の封水切れです。

台所、洗面台、浴室、洗濯機置き場、トイレ。それぞれの排水口の下には、S字やP字に曲がった管があり、そこに常に水がたまっています。この水が、下水管から上がってくる臭気と虫を止める蓋の役割をしています。ところが、使わない期間が続くとこの水は蒸発します。夏場なら一か月ほどで切れることもあります。

封水が切れると、家の中と下水管が直結します。まず臭いが上がり、次に虫が上がってきます。年に一度しか帰らない実家で「なんだかドブ臭い」「台所に虫が出るようになった」というのは、ほぼこれです。対策は簡単で、帰るたびに全部の排水口に水を流すこと。それだけです。ただ、遠方の方にはその「たびに」が難しい。

同じ時期に進むのがです。三月から十月にかけて、この地域の草は驚くほど伸びます。ひと夏放っておけば、人の背丈ほどになる場所もあります。庭木も同じで、枝が隣家や道路にはみ出し始めます。近所の方は最初は黙って我慢されますが、限界が来たときに市役所へ連絡が入ります。

そして郵便物。ポストがあふれていることは、外から見て「この家には誰も来ていない」と分かる最も明確なサインです。防犯の観点でも、近隣の心証の観点でも、良いことはひとつもありません。

一年目に、家の内側で起きること

三か月の段階までは、まだ「手間の問題」です。ここから先は「お金の問題」に変わっていきます。

一年を通して閉め切られた家の内部では、湿気が逃げ場を失います。日本の在来工法の木造住宅は、窓を開け、押入れを開け、風を通すことを前提に造られています。人が暮らしていれば、料理や入浴で出た湿気は換気で排出され、晴れた日には家中の空気が入れ替わります。この当たり前の営みが止まると、湿気は建材の中に留まり続けます。

結果として現れるのがカビです。押入れの奥、畳の裏、家具を置いていた壁面、北側の部屋の隅。最初は点だったものが、翌年には面になります。カビ臭は建材に染み込むため、掃除しただけでは取れません。壁紙を張り替え、畳を入れ替え、場合によっては下地から交換することになります。

畳も同時に傷みます。湿気を吸ったまま乾かない畳は、表面が波打ち、裏側にカビが回ります。六畳間の畳を新調すれば、表替えでも数万円、新調なら十万円を超えることもあります。それが二部屋、三部屋となれば、金額はすぐに膨らみます。

「時々窓を開けに行っている」は、思ったほど効きません 月に一度、二時間ほど窓を開ける。それでも何もしないよりはずっと良いのですが、残りの七百時間以上は閉め切られていることに変わりはありません。カビは湿度が高い状態が続くことで育ちます。月一回の換気は、育つ速度をわずかに遅らせる程度で、止めることはできません。これが空き家管理サービスの限界でもあります。人が毎日暮らしていることの効果とは、根本的に違う性質のものだとご理解ください。
空き家の傷み方には、順番があります 3か月 1年 3年 5年 手間の段階 封水切れ・草・郵便 数千円〜数万円 内装の段階 カビ・畳・臭い 数十万円 設備の段階 給湯器・配管・雨漏り 数十万〜百万円 構造の段階 腐朽・シロアリ
図1手間の段階で止めれば数万円。構造まで進むと、貸すことも売ることも難しくなります。

三年、五年で、修繕は桁が変わります

三年目あたりから、誰も気づかなかった不具合の結果が表に出てきます。

典型は雨漏りです。台風で瓦が一枚ずれる。雨樋が落ち葉で詰まって水が壁を伝う。棟板金の釘が浮く。人が住んでいれば、天井にシミが出た日に気づきます。無人の家では、次に誰かが来るまで誰も知りません。その間、雨水は野地板から小屋組へ回り、木材を濡らし続けます。木が濡れた状態が続けば、腐朽菌が働き、シロアリを呼びます。

この段階に入ると、費用の桁が変わります。屋根の部分補修なら十万円台で済んだものが、下地からのやり直しと室内の天井・壁の復旧まで含めると百万円を超えることも珍しくありません。シロアリの被害が土台や柱に及んでいれば、駆除だけでなく構造材の補修が必要になります。

設備も同時に寿命を迎えます。給湯器は使わなくても劣化します。長期間使わなかった配管は、内部に錆が出たり、パッキンが硬化して漏水したりします。ポンプ式の井戸を使っているお宅では、しばらく動かさなかったポンプが起動しないこともあります。「使わなければ長持ちする」というのは、住宅設備については当てはまりません。

この地域特有の事情も付け加えておきます。磐田市・袋井市は温暖で降水量も多く、湿気の面では木造住宅に厳しい土地です。加えて海に近い地域では塩分を含んだ風が吹き、金物やサッシ、屋根の板金の腐食が内陸より早く進みます。掛塚や福田といった沿岸寄りのエリアで空き家を見ると、同じ築年数でも劣化の進み方が違うことがはっきり分かります。「まだ十年しか経っていないから大丈夫」という感覚は、場所によっては通用しません。

もうひとつ、無人の家に固有のリスクとして不法投棄と侵入があります。人の出入りがないと分かった敷地には、粗大ゴミが置かれるようになります。処分費はもちろん所有者の負担です。空き巣に入られ、給湯器や配線の銅、アルミサッシといった金属類を持ち去られる被害も、実際に起きています。壊された窓や配管の復旧費のほうが、盗まれたものの価値より高くつくのが常です。これらは火災保険の空き家扱いとも絡んで、補償が受けられないことがあります。

五年を超えると、私たちが現地を見て「これは貸すより解体を含めて考えたほうがいい」と申し上げるケースが出てきます。直すのに三百万円かかる家を、月六万円で貸す。回収に四年以上かかり、その間の修繕リスクも背負う。それなら、更地にして売ったほうがご家族のためになることがあります。私たちは売買仲介が本業なので、そういう結論も遠慮なくお伝えできます。

傷む速さを決めているのは、たった一つのことです

ここまで見てきた劣化の連鎖を、遡っていくと、ほとんどが一点に行き着きます。換気です。

湿気が抜けないからカビが生える。カビが生えるから内装をやり直す。木が濡れたままだから腐る。腐るからシロアリが来る。そして雨漏りに気づく人がいないから、その連鎖が止まらない。空き家の傷みとは、換気と発見が止まった状態が続くことの結果だと言い換えられます。

だとすれば、対策も明確です。毎日窓が開き、水が流れ、異常があればその日に気づく人がいる状態にすればいい。つまり、誰かに住んでもらうことです。

これは精神論ではなく、費用対効果の話です。空き家管理サービスに月五千五百円を払っても、月に一度しか異常を見つけられず、家は少しずつ悪くなっていきます。入居者がいれば、二十四時間その家を気にかけている人がいて、しかも家賃が入ってきます。お金を払って劣化を遅らせるのか、お金を受け取りながら劣化を止めるのか。この差は五年で数百万円になります。

分かれ道は「毎日、人がいるかどうか」だけです 無人のまま 換気も発見もない 湿気がこもる カビ・腐朽 シロアリ 構造 人が住む 毎日の換気と発見 湿気が抜ける その日に発見 小さく直る 維持 しかも下の道では、家賃という収入がついてきます。
図2同じ家でも、住む人がいるかどうかで、五年後の姿がここまで変わります。

直すなら、どこから手をつけるか

すでに何年か空き家になっている場合、「貸すには何をどこまで直せばいいのか」が次の問題になります。ここには優先順位があります。

最優先は雨・水・シロアリです。雨漏り、給排水の漏水、シロアリの被害。この三つは、放置すると被害が拡大し続けるものです。ここを直さずに内装だけきれいにしても、一年後に同じ場所がやられます。逆に言えば、ここさえ止まっていれば、家は待てます。

次が生活に必須の設備です。給湯器、コンロ、トイレ、水栓。これらが動かなければ、そもそも人は住めません。ただし最新機種である必要はまったくなく、確実に動くものであれば十分です。

ここで一つ、費用を抑える考え方をお伝えします。戸建て賃貸を探している方は、新築アパートのような設備水準を期待していません。むしろ「多少古くても、駐車場が二台とれて、庭があって、音を気にしなくていい家」を求めて戸建てを探しています。だから、内装をすべて新品にする必要はないのです。私たちが募集をお預かりするときも、直す範囲は必要最小限をご提案します。かけたお金がそのまま家賃に反映されるわけではないからです。

そして最後が見た目です。壁紙、畳、床、外壁の塗装。ここは費用対効果で判断します。全部やれば見栄えは良くなりますが、家賃が同じだけ上がるとは限りません。「臭いを取る」ことだけは効果が大きいので、水回りの清掃と換気、必要ならクロスの張替えは検討する価値があります。

実際にお受けした相談から(再構成) 「もう十年空き家だから、直すのに何百万もかかると思って諦めていました。見てもらったら、雨漏りは一か所だけで、屋根の補修と水回りの清掃、給湯器の交換で八十万円ほど。それで月七万円で借り手がつきました」——見ずに諦めるのが、いちばんもったいない結論です。実際にはもっと悪いこともありますが、それも見なければ分かりません。

私たちが管理費0円でお預かりする理由

富士ヶ丘サービスは、磐田市で介護施設を運営しながら、宅地建物取引業者として不動産の相談を受けてきた会社です。本業は売買仲介です。それなのに、なぜ管理料をいただかずに戸建てをお預かりするのか。

いずれ売る日が来たとき、その売却をご一緒できればそれで成り立つからです。だから貸している間の管理料は0円で、その代わりに、預かっている間ずっとその家の状態と相場を見続けます。賃貸管理料を収益の柱にしている会社であれば、預かった家は長く預かるほうが得になり、「そろそろ売り時です」とは言いにくくなります。私たちはその立場に立たないことを選びました。

現在、磐田市・袋井市を中心に9件を管理費0円でお預かりし、すべてに借主がついています。0円なのは管理料であって、修繕費・原状回復費・固定資産税・火災保険料といった実費と、賃貸借契約時の仲介手数料は別途かかります。そこを曖昧にするつもりはありません。

この記事を読んで、ご実家がどの段階にいるか見当がついた方もいらっしゃると思います。三か月の段階なら、まだ何も失っていません。一年なら、内装の手直しで戻せます。三年を過ぎているなら、一度見せていただきたい。五年以上なら、貸す・売る・解体の三つを同じ土俵で比べるところから始めましょう。どの段階であっても、見てからでないと本当のことは言えません。そして見るだけなら、費用はかかりません。

この記事のまとめ

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本記事は2026年8月時点の一般的な整理であり、個別の建物の状態や必要な工事の判断ではありません。記載した劣化の進行時期・費用の目安は磐田市・袋井市周辺の在来工法の木造戸建てを想定したもので、立地・構造・築年・気候条件によって大きく異なります。実際の判断にあたっては、現地での確認と施工業者の見積りを必ずお取りください。当社は宅地建物取引業者として、不動産の状態確認・賃料の見立て・募集と管理の部分をお手伝いします。