ATAWI FUDOSAN 富士ヶ丘サービス株式会社

Column 05

遠方に住んでいて、
実家の管理ができない。

「東京から磐田まで、草刈りのためだけに帰る」。年に二回、三回とそれを続けてこられた方から、私たちはよくお話をうかがいます。交通費と、丸二日の時間と、帰るたびに増えていく気疲れ。それでも家は少しずつ傷んでいく。この負担を続けるより、誰かに住んでもらうほうが、確実に安く済みます。

遠方空き家管理草刈り近隣トラブル磐田市・袋井市

ご実家が磐田や袋井にあり、ご自身は東京、名古屋、あるいは関西にお住まいという方。ご相談者の中で、この形はとても多い割合を占めます。進学で地元を離れ、そのまま就職し、家庭を持ち、気がつけば実家に帰るのは年に一度か二度になっていた。そして親が施設に入るか、亡くなるかして、家だけが残った——という経緯です。

最初の一年は、まだ何とかなります。ゴールデンウィークとお盆に帰って、草を刈り、窓を開けて風を通し、郵便物を片付ける。ところが二年目、三年目となると、この帰省が重くなってきます。仕事の都合、子どもの予定、自分の体調。行けない年が出てくる。そして行けなかった年の翌年に帰ると、想像以上に荒れた家が待っている。

この記事では、遠方から空き家を持ち続けることの実際のコストを数字にしたうえで、帰らなくても進められる方法をご説明します。

遠方の空き家で、実際に起きていること

まず、遠くにいると見えないことを共有させてください。私たちが現地に伺って、所有者の方に写真をお送りすると、たいてい「ここまでとは思わなかった」というお返事をいただきます。

いちばん多いのが草木です。庭木は、放っておくと隣家の敷地や道路にはみ出します。民法では、隣地から越境してきた竹木の枝について、催告しても切ってもらえない場合などには隣人が自ら切り取れるという規定が置かれましたが、そもそも越境させている側に管理責任があることに変わりはありません。近隣の方は、たいてい最初は黙って我慢されます。そして限界が来たときに、市役所へ連絡が入ります。

次が害獣・害虫です。人の出入りがない家は、ハクビシンやアライグマ、スズメバチにとって理想的な住処です。天井裏に営巣されると、糞尿で天井板が抜け、悪臭が周囲まで届きます。この段階になると、近隣からの苦情は「お願い」ではなく「苦情」になります。

そして行政からの連絡です。空家等対策の推進に関する特別措置法により、市町村は放置された空き家について所有者に助言・指導・勧告・命令を行うことができます。倒壊のおそれや衛生上の問題がある「特定空家」だけでなく、そのままでは特定空家になるおそれのある「管理不全空家」も、勧告の対象になり得ます。勧告を受けると、住宅用地に対する固定資産税の特例が外れます。土地の固定資産税が最大で六倍近くに跳ね上がる、というのはこの仕組みのことです。

連絡は、あなたのところに来ます 「誰も住んでいないのだから、自分に関係ない」とはなりません。登記名義がお父様のままでも、市町村は相続人を調べて連絡してきます。遠方にお住まいでも同じです。そして苦情や勧告が届いてから動き出すと、選べる手段が減り、費用は増えます。草が伸びた段階なら数万円で済んだことが、天井が抜けてからでは百万円単位の話になります。私たちがご相談を「早いほど有利です」と申し上げるのは、精神論ではなく、単純に金額の問題です。

帰省のたびに、いくら使っているか

次に、ご自身の負担を数字にしてみます。ここは意外と、きちんと計算されたことがない方が多いところです。

項目1回あたり年2回なら
交通費(往復)1万円〜3万円2万円〜6万円
宿泊費0円〜1.5万円0円〜3万円
草刈り機の燃料・処分費0.3万円〜1万円0.6万円〜2万円
拘束される日数1〜2日2〜4日
年間の直接費おおむね3万円〜11万円+2〜4日

ここに、固定資産税・火災保険料・電気水道の基本料金が加わります。空き家の維持費全体では、年に十数万円から三十万円ほどになるのが一般的です。そして重要なのは、この支出が何も生んでいないという点です。家は良くなりません。良くならないどころか、毎年少しずつ悪くなっていきます。

もう一つ、金額に表れないコストがあります。気がかりであり続けることです。台風のニュースを見るたびに実家のことを考える。市役所からの封筒を見るたびに身構える。きょうだいから「どうするの」と聞かれるたびに答えられない。この状態が五年、十年続くことの精神的な重さを、私たちは軽く見ていません。

遠方の実家、年間で見るとどう違うか 自分で通う・管理を頼む 固定資産税・保険 8〜21万円 帰省・草刈り 3〜11万円 管理委託なら 年6.6万円〜 年間 マイナス11〜38万円 家は少しずつ傷み続ける 誰かに住んでもらう 家賃 年60〜96万円 固定資産税・保険 −8〜21万円 管理料 0円/帰省不要 年間 プラスに転じる 人が住むことで劣化も止まる ※ 磐田市・袋井市の戸建てを想定した目安です。修繕費・原状回復費・仲介手数料は別途必要です。
図1空き家管理を業者に頼んでも、支出が支出のままである点は変わりません。賃貸は、その符号が逆になります。

管理サービスに頼むという選択肢と、その限界

誤解のないように申し上げますが、空き家管理サービス自体は有効な手段です。当社でも月額五千五百円からお受けしています。月に一度、現地に伺って、通風・通水・郵便物の確認・外観の点検を行い、写真付きの報告書をお送りする。遠方の方にとって、この安心は決して小さくありません。

ただし、限界もはっきりしています。月に一度の巡回では、月に一度しか異常を見つけられません。台風で瓦がずれた翌日に大雨が降れば、次の巡回までに天井裏はずぶ濡れです。そして何より、管理サービスは支出です。年間六万六千円を払って、家が良くなるわけではなく、悪くなる速度がいくらか緩やかになるだけです。

これに対して、人が住んでいる家では、異常はその日のうちに見つかります。給湯器の調子が悪ければ入居者から連絡が来ます。雨漏りがあれば、天井にシミが出た時点で分かります。毎日二十四時間、その家を気にかけている人がいる状態——これが賃貸の、あまり語られない最大の効能です。しかもその管理は、お金を払うどころか、家賃という形で戻ってきます。

もちろん、貸すには最低限の状態が必要です。雨漏り、シロアリ、給排水の不具合は先に直さなければなりません。だから私たちは「まず状態を見せてください」と申し上げます。直す価値がある家なのか、直さずに売ったほうがいい家なのか、そこから正直にお答えします。

もうひとつ、遠方の方が見落としやすいのが火災保険です。誰も住んでいない建物は、保険会社の区分では「住宅物件」ではなく「一般物件」として扱われることがあります。この場合、保険料が上がるだけでなく、そもそも引き受けてもらえない、あるいは補償の範囲が狭くなることがあります。契約更新の案内が来たときに初めて気づき、無保険のまま数年が過ぎていた——というケースを、私たちは実際に見ています。放火や台風での損壊は、空き家だからといって避けてくれません。逆に、人が住んでいれば住宅物件として通常の火災保険に入れます。これも見えにくい差です。

そして近隣との関係です。田舎ほど、空き家であることは知られています。草が伸びれば「あそこの家は誰も来ない」と言われ、放置が続けば「連絡もつかない」と言われます。この評判は、いざ売るときに効いてきます。逆に、きちんとした入居者が住み、草も刈られている家は「あそこは管理されている」という評価になります。近所からの見え方は、そのまま将来の売りやすさに繋がります。遠方にいて挨拶にも行けない立場だからこそ、誰かに住んでもらう意味は大きいと考えています。

遠方からでも、話は進みます

「でも、何度も磐田まで行かないと手続きできないんでしょう」。ここが最後の障壁になっている方が多いので、はっきり書いておきます。ご帰省は、原則として不要です。

まず現地確認。これは私たちが伺います。鍵をお送りいただくか、近くのご親族に開けていただければ、室内まで確認して写真と所見をお送りします。何がどう傷んでいて、貸すために何が必要で、いくらかかりそうか。この段階でご負担いただく費用はありません。

次に賃料の見立てと募集条件の決定。これは電話とメール、あるいはLINEで進められます。普通借家にするか定期借家にするか、ペットや事業利用をどうするか、いつから貸せるようにするか。ご相談しながら決めていきます。

そして契約。賃貸借契約は、書類の郵送で締結できます。宅地建物取引業法上の重要事項説明も、賃貸であればオンラインでの実施が認められており、実務でも広く行われています。入居者への鍵の引き渡しから、入居後の連絡窓口、退去時の立会いまで、私たちが現地で行います。

荷物の整理だけは、どうしてもご家族の判断が必要な部分が残ります。ただ、これも一度に全部を決める必要はありません。残すもの・処分するもの・保留にするものに分け、保留分は倉庫に預けるという形にすれば、その場での決断は最小限で済みます。ご帰省が一度で済むよう段取りを組みますので、日程だけ教えてください。

貸し出したあとの心配についても触れておきます。「遠くにいるのに、入居者から夜中に電話がかかってきたらどうするのか」。そうはなりません。入居者からのご連絡はすべて当社が窓口になります。給湯器が止まった、鍵をなくした、隣の木が越境してきた——こうした連絡は私たちが受け、現地で対応します。オーナー様にご相談するのは、費用の発生する修繕をどうするかを決めていただくときだけです。その判断も、写真と見積りをお送りしたうえで、電話やメールでいただければ結構です。

退去の際も同じです。立会いも、原状回復の確認も、次の募集の準備も、現地は私たちが行います。遠方にお住まいのオーナー様が「持っていることを忘れていられる」状態——それが賃貸のいちばん大きな効能かもしれません。実際、お預かりしている物件のオーナー様のうち何名かは県外にお住まいで、年に一度、精算のご連絡を差し上げるだけの関係になっています。

遠方のまま、ここまで進みます 1 ご連絡 住所と固定資産税の 通知書だけで結構です 電話・LINE・メール 2 現地確認 当社が伺います 写真と所見を送付 ご帰省は不要 3 条件を決める 賃料・契約形態・時期 修繕の要否 電話とメールで 4 契約 書類は郵送で 説明はオンライン可 鍵の引渡しは当社 ご帰省が必要になるのは、荷物の要る・要らないを決めていただくときだけです。 それも一度で済むように段取りしますので、日程だけお知らせください。
図2ご相談から契約まで、遠方のまま進みます。現地で動くのは私たちの役目です。
実際にお受けした相談から(再構成) 「横浜から年に二回、草刈りに帰っていました。八年続けて、交通費だけで五十万円は使っている計算になります。今は入居者さんがいるので帰らなくてよくなり、家賃も入る。もっと早く相談すればよかったというのが正直なところです」——遠方の方ほど、動き出しが遅れます。相談したところで何かが始まるわけではないので、まず状態だけでも知っておいてください。

私たちが管理費0円でお預かりする理由

富士ヶ丘サービスは、磐田市で介護施設を運営しながら、宅地建物取引業者として不動産の相談を受けてきた会社です。本業は売買仲介です。それなのに、なぜ管理料をいただかずに家をお預かりするのか。

理由は単純で、いずれ売る日が来たとき、その売却をご一緒できればそれで成り立つからです。賃貸管理料を収益の柱にしている会社であれば、預かった家はできるだけ長く預かるほうが得になり、「そろそろ売り時です」とは言いにくくなります。私たちは違います。貸している間は管理料0円、そして売買仲介として相場を見続けているので、売り時が来たら「今なら売れます」とお伝えできます。遠方の方にとって、地元で家を見ていてくれる人がいることの意味は、そこにあると思っています。

現在、磐田市・袋井市を中心に9件を管理費0円でお預かりし、すべてに借主がついています。0円なのは管理料であって、修繕費・原状回復費・固定資産税・火災保険料といった実費と、賃貸借契約時の仲介手数料は別途かかります。そこを曖昧にするつもりはありません。

この記事のまとめ

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本記事は2026年8月時点の一般的な整理であり、個別のご事情に対する法務・税務の最終判断ではありません。空き家に関する条例や助成の内容、勧告の運用は自治体によって異なります。実際の手続きにあたっては、各自治体の空き家担当窓口、司法書士、税理士など専門家の確認を必ず受けてください。当社は宅地建物取引業者として、不動産の状態確認・賃料の見立て・募集と管理の部分をお手伝いします。