Column 08
固定資産税だけを、
毎年払い続けている家。
毎年四月から五月にかけて、市役所から封筒が届きます。誰も住んでいない実家の、固定資産税の納税通知書。開けるたびに気が重くなるけれど、払わないわけにもいかない。この「何も生まないのに出ていくお金」を、いつまで続けるつもりでいるか。そこを一度、数字で考えてみませんか。
私たちのところに来られるご相談で、いちばん多い入口がこれです。「特に困っているわけではないんです。ただ、固定資産税だけずっと払っていて、これでいいのかなと思って」。
実際、困っていない方が多いのです。金額は年に十万円前後。月に直せば一万円足らず。生活を圧迫するほどではありません。だから、決断を先送りできてしまう。そして気がつけば五年、十年と経っている。この「困らない金額」が、実はいちばん厄介です。
この記事では、その金額を積み上げてお見せしたうえで、多くの方が知らない「特例が外れる」という仕組みと、そこから抜ける道をご説明します。
十年払い続けると、いくらになるか
まず、ご自身の納税通知書を手元に置いてください。そこに書かれている年税額を十倍してみてください。それが、今の状態をあと十年続けた場合に支払う金額です。
| 年間の固定資産税・都市計画税 | 5年間 | 10年間 | 20年間 |
|---|---|---|---|
| 6万円 | 30万円 | 60万円 | 120万円 |
| 10万円 | 50万円 | 100万円 | 200万円 |
| 15万円 | 75万円 | 150万円 | 300万円 |
そして実際には、税金だけでは終わりません。空き家の火災保険料が年に二万円から六万円。電気と水道を止めずに置いておけば基本料金が年に一万円ほど。草刈りを業者に頼めば一回あたり一万円から三万円。遠方の方なら帰省の交通費。これらを足すと、空き家の維持費は年に十数万円から三十万円という水準になります。
十年で百五十万円から三百万円。この金額で何ができたかを考えると、多くの方が言葉に詰まられます。そして重要なのは、この支出によって家が良くなるわけではないということです。むしろ同じ十年で、家は確実に傷んでいきます。お金を払いながら、資産価値が減っていく。これが空き家を持ち続けるということの正体です。
今の税額は、実は大幅に安くしてもらっています
ここで、多くの方がご存じない仕組みをお伝えします。今払っている固定資産税は、本来の税額ではありません。大幅に軽減された金額です。
土地の上に住宅が建っている場合、その土地は「住宅用地」として課税標準額が軽減されます。二百平方メートルまでの部分(小規模住宅用地)は六分の一に、それを超える部分は三分の一に。都市計画税についても、それぞれ三分の一、三分の二に軽減されます。この特例のおかげで、住宅が建っている土地の税負担は大きく抑えられているのです。
問題は、この特例が外れる場合があることです。外れる条件は二つあります。
ひとつは建物を取り壊したとき。更地にすると住宅用地ではなくなるので、翌年度から特例が外れます。「空き家が傷んできたから解体しよう」と考えた方が、翌年の納税通知書を見て驚かれるのはこれです。
もうひとつが空き家として勧告を受けたときです。空家等対策の推進に関する特別措置法により、市町村は、そのまま放置すれば倒壊等のおそれがある「特定空家」に加え、そのままでは特定空家になるおそれのある「管理不全空家」についても、指導・勧告を行うことができます。勧告を受けた時点で、住宅用地の特例の対象から外されます。建物は建ったままでも、です。
解体すれば税が上がり、放置すれば勧告される
ここに、空き家所有者が陥るジレンマがあります。整理するとこうです。
放置すると、家は傷み続け、いずれ管理不全空家として勧告を受ける可能性が出てきます。勧告されれば特例が外れ、税負担が上がります。しかも傷んだ家は売却価格も下がっています。
解体すると、勧告のリスクはなくなりますが、更地になった時点で特例が外れ、翌年度から税負担が上がります。加えて解体費用そのものが、木造戸建てで百万円から二百万円ほどかかります。売れるまでの間、上がった税金を払い続けることになります。
つまり、どちらを選んでも税負担は上がるのです。すぐに売れる見込みがあるなら解体して更地で売るのは合理的ですが、売れるかどうか分からない状態で解体に踏み切るのは、なかなか勇気の要る判断です。
ちなみに、解体を検討される場合は解体の時期にも注意が必要です。固定資産税は毎年一月一日時点の状況で課税されます。年内に解体して一月一日を更地で迎えれば、その年度から特例が外れます。逆に、一月二日以降に解体すれば、その年度は建物があったものとして課税されます。数日の違いで一年分の税額が変わることがあるので、解体業者と日程を詰める際は、この点を必ず確認してください。もっとも、これは税額を一年先送りするだけの話で、根本的な解決にはなりません。
また、自治体によっては老朽危険空き家の解体に対する補助金を設けている場合があります。金額や要件は市町村ごとに違い、予算の枠もありますので、解体を考えるなら早めに空き家担当窓口へ問い合わせる価値があります。ただ、補助を受けても解体費の全額が賄えるわけではなく、更地になった後の税負担が続くことに変わりはありません。
そこで、第三の道があります。
貸せば、税金は「経費」に変わります
賃貸に出すと、固定資産税の意味が変わります。
第一に、住宅用地の特例はそのまま続きます。人が住んでいる住宅ですから、当然です。勧告を受ける心配もありません。管理された家は、管理不全空家の要件に当てはまらないからです。
第二に、その固定資産税が不動産所得の必要経費になります。賃貸によって得た家賃は不動産所得として申告することになりますが、その際、固定資産税・都市計画税、火災保険料、修繕費、管理費、減価償却費などを経費として差し引けます。今まで純粋な持ち出しだった税金が、収入から差し引く項目に変わるのです。
この経費という点をもう少し具体的に見ておきます。年間の家賃が七十二万円だとして、そこから固定資産税十万円、火災保険料三万円、修繕費十万円、そして建物の減価償却費を差し引きます。減価償却は、建物の取得価額を法定耐用年数にわたって費用として配分する仕組みで、実際にお金が出ていくわけではないのに経費として計上できます。古い木造住宅では耐用年数を過ぎていることも多いのですが、相続で取得した場合の扱いを含め、ここは税理士に確認する価値のある部分です。結果として、家賃が入っていても課税所得はかなり圧縮されるケースが少なくありません。
第三に、これがいちばん大きいのですが、そもそも家賃から払えます。月六万円の家賃なら年に七十二万円。年十万円の固定資産税は、その一部でしかありません。財布から出ていく感覚そのものがなくなります。
「いつか売る」の、いつかが来ないままにしないために
固定資産税を払い続けている方の多くは、「いつか売ろうとは思っている」とおっしゃいます。その気持ちは本当だと思います。ただ、その「いつか」は、放っておくと来ません。私たちが見てきた限り、何かのきっかけがない限り、空き家はそのまま次の世代に引き継がれます。
そして次の世代に渡ったとき、事態はもっと難しくなります。相続人の数が増え、面識のない親族が共有者になり、話し合いはさらにまとまらなくなる。建物は二十年ぶんさらに傷んでいる。「いつか」を先送りするコストは、金額だけではないのです。
だからといって、今すぐ売ってくださいと申し上げるつもりはありません。売り時でない家を焦って手放す必要はありません。ただ、払い続けるだけの状態からは、抜けたほうがいい。貸すという選択は、売る決断を迫らずに、その状態から抜ける方法です。
私たちが管理費0円でお預かりする理由
富士ヶ丘サービスは、磐田市で介護施設を運営しながら、宅地建物取引業者として不動産の相談を受けてきた会社です。本業は売買仲介です。それなのに、なぜ管理料をいただかずに戸建てをお預かりするのか。
いずれ売る日が来たとき、その売却をご一緒できればそれで成り立つからです。だから貸している間の管理料は0円で、その代わり、預かっている間ずっとその家の状態と相場を見続けます。賃貸管理料を収益の柱にしている会社であれば、預かった家は長く預かるほうが得になり、「そろそろ売り時です」とは言いにくくなります。私たちはその立場に立たないことを選びました。
現在、磐田市・袋井市を中心に9件を管理費0円でお預かりし、すべてに借主がついています。0円なのは管理料であって、修繕費・原状回復費・固定資産税・火災保険料といった実費と、賃貸借契約時の仲介手数料は別途かかります。そこを曖昧にするつもりはありません。
納税通知書が届くたびに気が重くなる、というお気持ちには、金額以上の意味があると思っています。それは「この家をどうするか決めていない」という宿題を、年に一度突きつけられているということだからです。金額そのものより、その感覚のほうが長く効きます。手を打った方が口を揃えておっしゃるのは、収支が改善したことより「あの封筒が怖くなくなった」ということでした。
この記事のまとめ
- 年10万円の固定資産税は、10年で100万円、20年で200万円。維持費全体では年十数万〜三十万円が出ていきます。
- しかも同じ期間に、家は傷み、売却価格は下がっていきます。支出と資産価値、二本の線が開いていきます。
- 今の税額は住宅用地の特例で大幅に軽減された金額です。本来の額ではありません。
- この特例は、建物を解体したときと、管理不全空家・特定空家として勧告を受けたときに外れます。
- 放置しても解体しても税負担は上がる方向です。貸せば特例は続き、税は必要経費になり、家賃から払えます。
- ただし家賃収入には確定申告が必要で、保険料に影響する場合があります。数字を出したうえでご判断ください。
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本記事は2026年8月時点の一般的な整理であり、個別の税額や制度適用の判断ではありません。固定資産税・都市計画税の税率、評価額、負担調整措置、住宅用地の特例の適用は、市町村および物件の状況によって異なります。実際の税額や特例の可否は、お住まいの市町村の資産税課、および税理士にご確認ください。当社は宅地建物取引業者として、不動産の状態確認・賃料の見立て・募集と管理の部分をお手伝いします。