Column 14
家賃6万円で貸したら、
手元にいくら残るのか。
「貸したらいくらになるんですか」。当然のご質問です。ところが、この問いに正直に答えている情報が驚くほど少ない。家賃の額だけを見せて、そこから引かれるものを書かない。この記事では、手元に残る金額まで計算します。都合の悪い数字も入れます。
不動産の収支の話には、二種類あります。よく見せるための数字と、実際に手元に残る数字です。私たちがお出しするのは後者です。理由は簡単で、期待させて貸してもらっても、後で「話が違う」となれば、売却まで含めた長いお付き合いができなくなるからです。
ここでは、磐田市・袋井市でよくある戸建て——三十年から四十年経った木造二階建て、駐車場二台、間取りは4DKから5DK程度——を想定して計算します。家賃は月六万円としましょう。
年間の収入と、そこから引かれるもの
まず、収入と支出を並べます。
| 項目 | 年額 | 備考 |
|---|---|---|
| 家賃収入 | 72万円 | 月6万円 × 12か月 |
| 固定資産税・都市計画税 | −10万円 | 物件により6万〜15万円 |
| 火災保険料 | −2万円 | 住宅物件として加入 |
| 修繕の積立て | −7万円 | 家賃の約1か月分を目安に |
| 空室リスク | −6万円 | 1年あたり1か月分を見込む |
| 当社の管理料 | 0円 | オーナー様からはいただきません |
| 差引き | 47万円 | 税引き前 |
ここから所得税・住民税がかかります。ただし、この四十七万円がそのまま課税されるわけではありません。減価償却費という、実際にお金が出ていかないのに経費にできる項目があるためです。木造住宅の法定耐用年数は二十二年で、それを過ぎた中古建物には短い年数が適用されます。相続で取得した場合は、亡くなった方の取得価額と経過年数を引き継ぎます。この計算は税理士の領分ですが、結果として課税所得はかなり圧縮されることが多いとだけ申し上げておきます。
仮に課税所得が二十万円程度に収まり、税率が二十パーセント(所得税+住民税)だとすると、税金は四万円ほど。手取りは年におよそ四十三万円、月に直すと三万五千円ほどという計算になります。
この数字を見て、少ないと感じられたでしょうか。それとも多いと感じられたでしょうか。比べるべき相手は、空き家のまま置いた場合です。その場合、固定資産税と保険料で年に十二万円が出ていき、家は傷み続けます。四十三万円のプラスと十二万円のマイナス。その差は年に五十五万円、五年で二百七十五万円です。
もう一点、家賃以外の収入についても触れておきます。契約時には敷金と礼金を受け取ることがあります。この地域の戸建て賃貸では、敷金は家賃の一〜二か月分、礼金は〇〜一か月分といったところです。敷金は預かり金であり収入ではありません。退去時に原状回復費を差し引いて返還します。礼金は収入になりますが、毎年入るものではありません。初年度の資金繰りには効きますが、収支の柱として当てにしないでください。
更新料についても、地域差があります。二年ごとに家賃の〇・五〜一か月分をいただく慣行のある地域もありますが、この地域の戸建てでは設定しないことも多く、設定すれば入居者にとっては負担増になります。長く住んでもらうことを優先するなら、更新料を取らないという判断もあり得ます。私たちは、募集条件を決める段階でこのあたりも含めてご相談します。
初年度だけは、様子が違います
ここが正直に書かれていないことの多い部分です。貸し始めの一年目は、手元にほとんど残りません。むしろマイナスになることもあります。
理由は、初期費用が集中するからです。
| 初期費用 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 修繕・クリーニング | 30万〜150万円 | 状態による。ここがいちばん大きい |
| 片づけ・不用品処分 | 0万〜50万円 | 荷物が残っている場合 |
| 賃貸借契約の仲介手数料 | 家賃1か月分+消費税 | 契約時に一度だけ |
| 火災保険(オーナー側) | 2万〜6万円 | 年払いまたは長期一括 |
仮に修繕に八十万円、片づけに二十万円かかったとすると、初期費用は約百七万円。初年度の手取り四十三万円では届きません。回収が終わるのは、二年目の終わりから三年目にかけてということになります。
この「三年」という数字が、私たちが貸すかどうかを判断する目安です。初期費用を三年以内に回収できる見込みがあれば、貸すことをお勧めします。五年を超えるなら、売却や解体を同じ土俵に乗せて比べたほうがいい。この計算をせずに「とりあえず直しましょう」と言う会社があれば、少し慎重になってください。
なお、この初期費用はすべてが一度に必要なわけでもありません。片づけはご家族でやれば費用はかかりませんし、修繕も、貸せる最低限に絞れば三十万円台で収まる家もあります。大事なのは、いくらかけるかを先に決めてから工事の話をすることです。「見積りを取ってから考える」だと、業者の提案する範囲がそのまま予算になってしまいます。
また、初期費用の一部はその年の必要経費として計上できるものがあります。修繕費として一括で落とせるものと、資本的支出として減価償却しなければならないものの区別は税理士の判断になりますが、いずれにせよ課税所得を下げる方向に働きます。この点も、初年度の実質的な負担を軽くします。
見込んでおくべき、二つの不確実性
収支表に必ず入れておくべきものが二つあります。空室と、突発的な修繕です。
空室について。戸建て賃貸は、アパートに比べると入居期間が長い傾向があります。家族で住まれることが多く、子どもの学校の関係で簡単には動かないからです。五年、十年と住まれる方も珍しくありません。ただし、いったん空くと次が決まるまで数か月かかることがあります。私たちは年に一か月分を空室として見込んでおくことをお勧めしています。
突発的な修繕について。給湯器は十年から十五年で寿命が来ます。交換費用は十万円台後半から。エアコン、給排水、屋根や外壁の部分補修。これらは「いつか必ず来る」ものです。家賃の一か月分を毎年積み立てておけば、多くの場合は賄えます。逆に、積み立てずに全額を生活費に回してしまうと、給湯器が壊れた月に慌てることになります。
この二つに加えて、意外に見落とされるのが賃料の下落です。十年、二十年と貸し続ければ、建物は古くなり、募集のたびに賃料は少しずつ下がっていきます。月六万円で貸し始めた家が、十年後に五万五千円になることは普通にあります。長期の収支を考えるときは、賃料が横ばいで続く前提を置かないほうが安全です。
逆に、この地域の戸建て賃貸には強みもあります。供給が非常に少ないのです。アパートは次々に建ちますが、貸し出される戸建ては限られています。駐車場が二台とれて、庭があって、音を気にしなくていい家を探している家族は確実にいて、その受け皿がほとんどない。だから、極端な賃料下落は起きにくいというのが、現場での実感です。
数字に表れないものを、最後に
ここまで金額の話をしてきましたが、収支表に載らない価値も挙げておきます。
建物の劣化が止まります。無人の家は、換気されないことで内部から傷んでいきます。人が住めば、毎日窓が開き、水が流れ、異変はその日のうちに見つかります。五年間空き家にした家と、五年間人が住んだ家では、売却時の査定額が数十万円から百万円単位で変わることがあります。この差は、収支表の外側にあります。
管理の負担がなくなります。草刈りに帰る必要がなくなり、台風のたびに心配することもなくなり、市役所からの通知に身構えることもなくなります。遠方にお住まいの方にとって、この解放は金額に換算しにくい価値です。
そして、売る決断を急がなくてよくなります。経済的な理由で早く手放さざるを得ない、という状況から抜けられます。相場が良くなるまで待てる。ご家族の気持ちが整理されるまで待てる。時間を買えるというのが、賃貸のいちばん大きな効能かもしれません。
最後に、この収支をどう受け止めるかについて。月三万五千円という手取りを、少ないと感じる方は多いと思います。ただ、この金額は何もしなくても入ってくるお金です。入居者との連絡も、家賃の入金確認も、退去の立会いも、私たちが行います。オーナー様がすることは、年に一度、修繕の要否を判断していただくくらいです。時間を投じずに得られる収入としては、決して小さくないと思います。
そして、この収入には終わりがあります。売ると決めた日に終わります。だから、貸すことは資産運用というより「売るまでの時間をどう過ごすか」という話です。その時間を、支出だけが続く空き家として過ごすのか、収入が入り建物も保たれる状態で過ごすのか。私たちがお伝えしているのは、それだけのことです。
ここまでお読みいただいて、ご自分の家ではいくらになるのかが気になっていると思います。その数字は、家を見ないと出せません。間取り、駐車台数、設備の状態、道路付け、学区。同じ磐田市内でも、条件によって想定家賃は月四万円台から八万円台まで開きます。この記事の六万円は、あくまで真ん中あたりの一例です。
私たちが管理費0円でお預かりする理由
富士ヶ丘サービスは、磐田市で介護施設を運営しながら、宅地建物取引業者として不動産の相談を受けてきた会社です。本業は売買仲介です。それなのに、なぜ管理料をいただかずに戸建てをお預かりするのか。
いずれ売る日が来たとき、その売却をご一緒できればそれで成り立つからです。この収支表に「管理料 0円」と書けることが、手取りにそのまま効きます。一般的な賃貸管理では家賃の五パーセント前後が管理料としてかかります。月六万円なら年に三万六千円。十年で三十六万円です。私たちはこれをいただきません。
現在、磐田市・袋井市を中心に9件を管理費0円でお預かりし、すべてに借主がついています。0円なのは管理料であって、修繕費・原状回復費・固定資産税・火災保険料といった実費と、賃貸借契約時の仲介手数料は別途かかります。そこを曖昧にするつもりはありません。
この記事のまとめ
- 家賃6万円・年72万円のモデルで、経費を引いた手取りは年およそ43万円。月に直すと3万5千円ほどです。
- 比べる相手は、空き家のまま置いた場合の年12万円のマイナス。差は年55万円になります。
- 初年度は残りません。修繕・片づけの初期費用が集中し、回収は2年目末から3年目です。
- 収支表には空室(年1か月分)と修繕積立(家賃1か月分)を必ず入れてください。
- 所得が増えると国保・介護保険料に影響することがあります。数字を持って窓口にご確認ください。
- 収支表に載らない価値——劣化が止まる、管理から解放される、売る決断を急がなくてよくなる。
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本記事は2026年8月時点の一般的な整理であり、個別の収支や税額の保証ではありません。記載した金額は磐田市・袋井市周辺の戸建てを想定したモデルケースで、物件の規模・立地・状態・時期によって大きく異なります。所得税・住民税・社会保険料への影響は、他の所得や世帯の状況によって変わります。実際の判断にあたっては、税理士および市町村の窓口にご確認ください。当社は宅地建物取引業者として、不動産の状態確認・賃料の見立て・募集と管理の部分をお手伝いします。